高齢化社会に貢献!5年勤めて分かった在宅分野の作業療法士として働くメリット・デメリット

医療関連

「作業療法士」

この職種名を聞いて…たいていの方は「?」と疑問を浮かべたのでは無いでしょうか。一般的には認知されていない職業かもしれません。

 

怪我や病気をして病院でリハビリテーション(以下、リハビリ)を受けた方や、お子さんが療育施設で支援を受けている方は、携わったことがあると思います。

 

作業療法士とは?

事故や病気などによって身体や精神に不自由さを抱える方に対して、医師の指導のもとにリハビリを行う職種です。

治療するのは医師や看護師です。日常生活を送るために必要なリバヒリを行うのが作業療法士です。

 

理学療法士との違いは?

理学療法士という似た名前の職種があります。理学療法士は座る・立つ・歩くなどの基本的な動作を訓練します。病院で勤めるケースがほとんど。

作業療法士は病院だけでなく様々な場所で活躍しています。生活に必要な動作(日常生活動作、家事など)や、精神面に対するリハビリを行います。対象者の生活をより豊かにしようと支援します。

利用者の体(動き)を改善しようという考えは同じですが、役割対象が違っています。

 

作業療法士はどんなところで働くの?

活躍の場所は一般病院,クリニック,老人保健施設などの入所施設,精神科病院,子供の療育施設,行政,訪問看護ステーションなど。

日常生活をサポートするリハビリのため、様々な場所で活躍する仕事です。高齢者施設から在宅へと復帰する際は、その家に合わせたサポートやマニュアルを考えるのも私達の仕事です。

 

作業療法士になるには?

国家資格「作業療法士」が必要です。

専門、大学でこの分野専攻と資格取得が必要となります。

 

在宅分野で働く作業療法士の仕事内容

 

・まだ学生でこれから作業療法士になる

・現在作業療法士として働いていて在宅分野に興味がある

それぞれ立場は違うと思いますが、在宅作業療法士がどんな仕事をしているのか、私の体験談をもとにご紹介させて頂きます。

 

たくさんの勤務先がある中で私が選んだのは「訪問看護ステーション」でした。ここでは介護保険や医療保険を利用する患者(以後利用者)の自宅に伺います。必要なリハビリ、相談、あるいは話し相手になります。対応する疾患や年齢は様々ですが、骨折や脳血管疾患、神経難病、がん等の高齢者の方が多いです。

 

1日の仕事の流れ(私の場合)

8:30 出勤
8:30~9:00 看護師とミーティング、患者の情報共有
9:00~9:30 準備、移動
9:30~10:30 1件目のお宅でリハビリ→移動
10:30~11:30 2件目リハビリ→移動
11:30~12:30 3件目リハビリ→移動

12:30~13:30 会社に戻り昼食

13:30~14:00 カルテ記入、書類、連絡業務→移動
14:00~15:00 4件目リハビリ→移動
15:00~16:00 5件目リハビリ→移動
16:00~17:00 6件目リハビリ→移動
17:00~17:30 会社に戻ってカルテ記入、書類、連絡業務

当然ですが…仕事のほとんどは在宅へ伺ってのリハビリです。移動は社用車を使います。朝の申し送りが終わったら、カルテと血圧計、体温計、聴診器、リハビリの道具を積み込んで出発です。

 

介護保険のリハビリは1単位20分で料金が決まっているため、これを基準に滞在時間が決まります。私が働いていた訪問看護ステーションでは1件あたり40分が基本でした。一日の最大訪問数は6件程度です。見て頂ければ分かる通り移動がたくさんあります。スケジュールはぎっちりです。

 

利用者の急なお休み、入院などで空きが出ると、その時間帯は空白になります。その時は書類業務が入ってきます。訪問業務以外にも主治医、ケアマネージャー、病院スタッフ、ご家族との電話連絡も必要です。関係職種が集まる会議にも出席を求められることがあります。

 

在宅分野の作業療法士として働くメリット

 

私が働いてきた中で実際に感じたメリットはこの4つです。

  1. 残業は少なめ
  2. 育児や家庭との両立がしやすい
  3. 資格職なのでつぶしが効く、一度仕事を離れても復帰しやすい
  4. AIに取って代わられない仕事

 

在宅作業療法士メリット1.残業は少なめ

 

大病院で働くと残業があります。リハビリ作業自体がたくさんあるわけではなく、病院内でのやり取り、ミーティング等様々な業務が必要となってきます。

 

また、勉強会や学会集まりなどで、勤務終了後に強制的に時間を取られることがあります。仕事の勉強ですし、常に新しい知識を得る必要がありますが、それでも家庭との両立が難しいと感じることもあります。私も以前病院勤めでしたが子育てとの両立がかなり難しかったです。

 

一方で在宅作業療法士の場合、残業がほとんどありません。

 

もちろん他事業所への連絡業務、主治医への報告書作成等、リハビリ以外の仕事も多々ありますが、受け持ちの利用者のリハビリが正常に終了すれば、残業を求められることはありません。

 

一人で在宅をまわる仕事というのも大きいです。自分がしっかり仕事を終わらせることが出来れば、周りに引っ張られることもありません。隙間時間にうまく書類作成等をこなして、ほぼ残業ゼロで働いています。

 

在宅作業療法士メリット2.育児や家庭との両立がしやすい

 

先に記載したように、残業が少ないため育児や家庭との両立がしやすい仕事です。病院勤めの作業療法士の中には、出産を機に退職して数年間お休みをとる方がいます。子育てしながら仕事は無理と判断したのかもしれませんね。在宅作業療法士の場合は、子育てを理由に辞めていく人はほとんどいません。それだけ両立しやすいのだと思います。

 

新卒は病院/老人施設に就職

→そこで経験を積む

→在宅分野は一人で訪問するため経験が必要

中堅〜ベテランが子育て両立のため在宅分野へ

このような流れです。病院勤めと比べるとゆったりとした時間が流れます。家庭や育児はお互い様だよね、という雰囲気です。

 

また、在宅分野はパートとしても求人も多いです。そのため、資格を持っているけど現役バリバリは難しいという方も入社しやすいのが特徴です。

 

在宅作業療法士メリット3.資格職なのでつぶしが効く、一度仕事を離れても復帰しやすい

 

「復帰したい」

 

そう思っても一般的な仕事では「しばらく離れていたから難しい」と判断され、不採用になることもあります。

 

作業療法士に関しては、資格が無いと働けないため求人倍率は低い(採用さやすい)です。現場から離れていたとしても採用されやすい傾向に。特に在宅分野では作業療法士は不足しており、引く手あまたな状況です。

 

元職員「子育てが一段落したのでまた復帰したい」

経営者「本当?それは嬉しい!ぜひぜひ」

 

歓迎されて迎え入れたケースをたくさん目にしてきました。正社員での再雇用も珍しくなく、採用のハードルも低いです。

 

また、一人で在宅をまわる仕事、というのも復帰しやすい要因だと思います。病院勤めで戻ったとして、3年後同じスタッフはいないかもしれません。知識ノウハウも置いていかれるので、周りについていくのがやっとの状態。そして、裏では陰口を言われたり…と大変な思いをするかもしれません。

 

在宅作業療法士メリット4.AIに取って代わられない仕事

 

人工知能やロボット等による代替可能性が低い100種の職業

作業療法士、医療ソーシャルワーカー、保育士、助産師 他

野村総合研究所発表

 

祝!作業療法士!!

作業療法士だけでなく医療系はやはり強いのか・・・

たくさんの職種がラインクインしていましたが(笑)

 

高齢化によってリハビリを必要とする方はどんどん増えていきます。需要は無くなりません。これは病院勤め、老人施設勤めでも同じことですが、仕事が奪われないのは安心できるポイントですね。在宅分野に関してはリハビリだけでなく、利用者に密接に関われるのもポイントは高いです。

 

「あなたと話すのが楽しみなのよ、リハビリはおまけ」

 

そう言って頂ける利用者さんもいます。泣けてきますね…。これはAIには出来ませんし、もしかするとリハビリをしなくてもやっていける仕事なのかもしれません(ダメですけど)

 

在宅分野の作業療法士として働くデメリット

 

もちろんデメリットもあります。

  1. キャリアアップが難しい
  2. 受け持ちの患者が亡くなる悲しみが大きい
  3. 年齢を重ねると体力的にきつい

 

在宅作業療法士デメリット1.キャリアアップが難しい

 

作業療法士の平均年収は470万だそうです。

(諸説ありますが某サイト参照)

 

しかもこれが初任給です!

 

かなり高いですよね。私も新卒で病院に勤めた時にビックリしたのを覚えています。ではここからぐんぐん伸びるのか…というとそんなことありません。収入はほぼ横ばいで変わっていきません。

 

一般企業であれば初任給は少ないですが、出世していくことで収入が増えていくのが一般的かと思います。これは医療分野全体に言えますが保険を適用される仕組みのため、「客単価」は変わらないのが収入が変わらない(増えていかない)理由です。

 

それでも病院や施設勤めでキャリアを積んでいけば、新しい道が見えてきます。学会で目にとまり引き上げられる、といったこともあるでしょう。一方で在宅作業療法士の場合はそれが難しいのが現状です。

 

「もっともっと作業療法士を追求したい」

「キャリアをどんどん積んでいきたい」

という方には向いていない職場かと思います。

 

在宅作業療法士デメリット2.受け持ちの患者が亡くなると悲しみが大きい

 

突然亡くなることで「リハビリ卒業」となってしまう利用者もいらっしゃいます。本来ならば目標の動作ができるようになることで「卒業」されることが一番うれしいことなのですが、そんなケースばかりではないところに辛さを感じます。

 

病院でも経験はありますが、在宅分野ではお家にまでお伺いして深いかかわりになります。その分悲しみも倍増します。亡くなった患者宅の近くを通ると「あんなことがあったな…」と悲しい気持ちになります。何年たっても慣れることはありません。

 

在宅作業療法士デメリット3.年齢を重ねると体力的にきつい

 

年々体力的にきつくなってきています…。

 

酷暑の夏の日も、雪が降る冬の日も、来る日も来る日も外回り。暑い時期はガンガンにエアコンを入れた車内から、外に出た時の温度差にやられます。自分が熱中症や脱水にならないように、気を配らなければなりません。

 

また力仕事も必要です。利用者を抱え上げたりすることはそこまでありませんが、ちょっとした動作で腰を傷めてしまう作業療法士います。体を悪くすると仕事にならないのもデメリットです。

 

最後に

 

私は一般企業に勤めて数年経験。

その後に作業療法士を目指しました。

 

25歳で学校に入りなおし資格を取りましたが、同じクラスに40代や50代の同級生もいました。いつからでもチャレンジできるのもこの資格の良いところだと思います。

 

特に在宅分野は対人業務の色合いが濃いです。「自分が持っている人間性」が治療や支援に生かせることが多いのではないかと感じました。会話するのが得意だ、苦手ではないと感じるのであれば向いています。もし苦手だとしても必ず慣れますので安心してください。

 

利用者、そしてその家族に喜ばれる仕事です。ご自宅で密な関わりをしていくうちに暖かい心の交流が生まれることも大きな魅力です。日々在宅分野で奮闘している作業療法士について、少しでも感じていただければ幸いです。