障害者施設で働いて5年が経ちました。
福祉の仕事は「安い、きつい」と悪いイメージがありますが、職員全員がそう感じているわけではありません。私は障害者施設で働くのが「天職」だったようです。最高のやりがいを感じて働いています。
- 福祉の仕事をしたいけど何をしたら良いか分からない
- 障害者施設で働きたいけど実際のところを知りたい
そういった方に向けて記事を書いていきます。
障害者施設の実習、印象は「特になし」
今でこそ天職だと思っていますが、始めの印象は「特に無し」です。
社会福祉学科に通っていた私が配属されたのが知的障害者施設でした。知的障害を抱えた子供から大人までが通っています。遊び、作業を一緒にやるのが目的です。
決して嫌だったわけでも無かったのですが、やりがいがあるとも感じません。「将来は他の分野で働くんだろうな」くらいにしか思っていませんでした。ピンとこなかったの表現が正しいと思います。
大学卒業が近づくと就職活動が始まります。福祉は一般企業の就活よりも遅い時期に始まり、年明けの1〜2月に決まることがザラにあります。その頃になっても自分がやりたい仕事、つきたい分野は決まっていません。「どうしたら良いんだろう…」と焦っていたのを思い出します。
「もし決まってなかったら、うちで働かないか?」
声をかけてくれたのは実習先の障害者施設長です。実習ではピンとこなかった仕事です。焦っていた私は、思い切ってその施設で働くことに決めます。
施設としても分からない人を雇うよりも、実習経験者の方が安心できるとのことでした。前年度も実習経験者がそのまま就職していたので、毎年実習生にお声がけをしていたのかもしれませんね。
障害者施設の給料は?
福祉業界は給料が安いです。
それは一般企業と違って売上に限界があるからです。そのためワーカーにまで反映がされません。ただ、実際のところ給料はピンキリです。アルバイトよりも安い給料で働かさせている施設もあれば、ワーカー最優先とした割高な給料を出す施設もあります。
私の勤めた施設は後者です。他の施設と比較して高い初任給を頂けました。
- 基本給180,000円
- 危険業務手当10,000円
- 送迎手当10,000円
- 残業代 月5000円
- 役職手当 10,000円
- 資格手当 5,000円
- ボーナス 年3回(1.5ヶ月×3)
- 昇給年1回 3,000円
- 月収ベース 220,000円
年収ベース 3,450,000円
福祉業界ではかなり高い初任給だと思います。一般企業に勤めた友人とも遜色がない給与額でした。
「福祉施設やから給料安いのはおかしい」
「ボランティアって言葉もおかしい」
「働いたらそれ相応のものを渡さないといけない」
「福祉施設ほど大変な仕事はない」
とよく言ってくれています。ワーカーのことを思って頂けてありがたい限りです。
給料が良い施設で働くには?
- 母体がしっかりしている(病院など)
- 経営者がワーカー思い
少し脱線しますが、給料条件の良い施設はこの2つが満たされていると思います。
1つは母体がしっかりしていること。病院など他でちゃんと収益があれば、施設だけで大きく人件費削減といったことはしていません。
2つは経営者がワーカーのことを思ってくれているかです。面接だけでは分からないことも多いので、ボランティアに積極的に参加して確認するのが良いと思います。
経営者の話が聞ければ一番良いですが、難しい場合は施設の様子だけでも見てください。「これは直した方が良いのでは…」というのが放置されていると、経費削減をしており、給料自体も安く設定されていると思います。
障害者施設と一口にいっても幅広い!どの分野で働く?
あまり知られていませんが、一口に障害者施設といってもいくつか種類があります。主にはこの4種に区分されます。
- 就労支援A型
- 就労支援B型
- 生活介護
- グループホーム
就労支援A型
障害の程度がとても軽いが、一般就労はまだ難しい方が通います。共同生活を送りつつ作業をメインにした施設です。
一般企業からも作業依頼を受けて、簡単な袋詰、シール貼りといった雑務をこなします。パソコンを使った事務作業をやっている施設もあるようです。ワーカーはこの作業支援も行います。
就労支援B型
A型よりも障害が重い。区分けすると障害は中程度です。一般就労は不可能だが少しは働くことができる方が通います。
簡単な作業であれば、一般企業から仕事を受けることはあります。ですがメインとしては行っていない自立支援型施設です。
生活介護
重度の方が通う施設です。掃除、洗濯など生活の訓練を行います。また、生活行動ができない重度な方もいます。その方は一緒に遊んで楽しんでもらうことに焦点を当てています。
グループホーム
障害者の方が集まって暮らします。自立を目指した施設です。同じような状況の方が集まることで相乗効果もあります。
私の選んだ施設は生活介護分野
この4種類がありますが、私が選んだのは生活介護です。
日常生活の訓練をします。「訓練」と書くと厳しい印象を受けますが、遊びを取り入れ楽しく学ぶことを主としています。
利用者が自立することがゴールです。障害者は両親が見ているケースがほとんどです。子供が歳を取っていくのと同じで、両親も年齢を重ねてお世話をすることが出来なくなります。
障害を持っていても自立できるようにサポートする。
それが私の仕事です。
そして最大のやりがいでもあります。
(働いてしばらく経ってから感じました)
障害の種類は?
- 身体障害者
- 精神障害者
- 知的障害者
10年以上前は障害種類によって区分して支援をされていました。現在は一緒に支援していく方針になっています。
「なんで分けないで一緒に見るのだろう?」
入社当時はそう思っていましたが、施設自体が足りないのが理由のようです。他の就労所も定員がいっぱいで入れないのが現状です。入所する施設が決められてしまえば、送迎で両親にかかる負担は倍以上かもしれません。
また、倫理観の問題でもあります。差別という言葉がはびこるように、障害者内でも少なからず存在しています。身体障害が知的や精神をよく思わなかったり、あるいは逆も存在します。
施設を分けてしまえばその考えを変えることは出来ません。ただ一緒に生活をともにすることで、お互いを理解しあえます。相手の障害を受け入れることが出来れば、自分の障害も受け入れることが出来る。素晴らしい考えが根底にあります。
障害者施設は仕事だけど…一緒に遊ぶこと自体が楽しい!これって天職じゃない?
先にも書きましたが実習時には、何も感じなかった、ピンとこなかった仕事です。就職してからもすぐには払拭できませんでしたが、数ヶ月もすると気持ちが楽になっていきます。しばらくすると、「あれ?仕事楽しいかも?」と思うようになります。
コミュニケーションを重ねたことで利用者との距離が近くなったから、だと思います。語弊を恐れずに言えば「利用者が可愛い」のです。
もちろん大人の方に、そして年上に言うのは間違っていると思います。ですが、一緒にいればいるほど愛おしくなっていくのです。本当に毎日を遊んで楽しく過ごしている感覚。
「これ仕事?それとも遊び?」
良い意味で区別がつきません。
利用者は子供のように屈託のない笑顔、真っ直ぐな瞳をしています。
「〇〇さん大好き!ずっといてね!」
嬉しいことを言ってくれます。
利用者の生活支援をして自立を促し、また一緒にいることを感謝される。それが私にとって最大のやりがいとなっていきます。
1年経つ頃には・・・
「これは私の天職だわ!ずっとここで働きたい!」
人の心は変わるものですね(笑)
利用者といっしょに作品→フリマ販売→お金の使い方
生活訓練がメインとなりますが、それ以外にも物づくりを楽しみつつ、トレーニングの1つにしています。
- 紐にビーズを通す
- アンデルミン(帽子を編む)作業
- フリマで販売
作業を通して販売まで行います。ただ作るだけでなく楽しさ、充実感を味わってもらうことが出来ます。
NPO法人のため利益は出ないようにしましたが、それでも、お金の使い方やお客様との接し方を学ぶ良い機会となりました。
これは私の提案で行ったトレーニングです。施設長がこころよく了承してくれて実現しました。ただ決められた毎日を送るだけでなく、提案したことが実現し、それが利用者のトレーニングや笑顔に繋がります。
やり終えた時の達成感は……すごいです。
プールに入れてほしい…思いが身を結んだ!
もう1つ私が提案し実現したことを紹介します。
「利用者の運動不足を解消するにはどうしたら良いか?」
ミーティングで議題にあがりました。利用者は家にこもりがちです。職員数も限られているため、施設周りを散歩させるにしても一苦労です。結果として利用者は運動不足傾向になり、精神的にも、健康面でも悪影響を及ぼします。
「プールはどうか?」
私の提案が承認されました。
あとは実現に向けて行動するだけです。
ですが、そこからが一苦労。
近辺のスイミングスクールに掛け合いますが「対応していない」の一言、お払い箱です。過去に障害者がトラブルを起こして大変な目に合ったのが理由だそうです。
私は何度も足を運ぶことにします。
「障害者が運動不足で困っています」
「運動する方法が他に無いんです」
「私たちが責任を持って対応します」
プール施設側にも言い分がありましたが、私も諦めるわけにはいきません。3度目の訪問でようやく想いが伝わります。木曜日の1時間だけ、施設のスタッフが必ずつく、という条件付きでOKがでました。大きな一歩です。
それ以降、「毎週木曜はプールの日」として新しい取り組みが始まりました。利用者はプール未経験者も多く大喜び。家族もプールで泳ぐ子供の姿を見て涙。
この取り組みは話題となり、地元の新聞でも大きく取り上げられました。障害者が運動不足で困っていること、そして施設の取り組みを知ってもらうことが出来ました。
この時のことは今でも忘れていません。利用者の自立を促すために全力で打ち込めること。そして、それが楽しみながら進めることが出来ること。幸せな仕事です。
障害者施設の仕事は、一緒に成長することだと思っています。
助けてあげる、自立を促してあげる、そういった感覚ではありません。利用者からたくさんのことを学びますし、プール企画は私自身の成長でもありました。
最後に
人と関わる仕事はとにかく大変です。ですが、一般職とは違い他の仕事では出来ないことがたくさんあります。人と人とのつながる仕事というのは本当に素敵です。施設で働くことに関して悪く言う人もいますが、もっともっと評価されていい仕事だと思ってます。
- 一般企業でやりがいのない仕事に疲れた方
- 福祉で働きたいけど迷っている方
思い切って飛び込んできてほしいと思っています。