「お昼ご飯買ってきて」
「手紙をポストに出しておいて」
「美味しいレストランを調べといて」
あなたは上司から私用を頼まれていませんか?
有り得ないことですよね。その上司にはさらに上位役職がいるはず。少なくとも社長はいるため、あなたには内密にお願いをしているはずです。悪質なパワハラと言えるでしょう。
- 給料を払ってくれる立場
- 時間内であれば問題ない
と考える方は多いのではないでしょうか?
私も実際にそう思っていました。ですが、大きな会社ならまだしも、家族経営の会社ではそうもいきません。私用がどんどんエスカレート。誰も止める人がいないのです…。
- 業務時間の3分の1は私用で過ぎていく
- 終わらない仕事は時間外
- 休みの日も駆り出される
この記事では、家族経営の会社に勤めたことにより、仕事と私用の境界線が曖昧になってしまったこと。そして、まともに仕事ができなくなり結果として退職した体験談となります。
会社が分裂…なぜか家族経営の会社に入社することに
私が勤めていたのは法律事務所です。弁護士ではなく事務員として。その法律事務所は弁護士3人、事務員6人と少ないながらも、頂く仕事は大きくなものばかり。
海外にも系列事務所を置いており、東京進出も検討されていました。これから規模を拡大しようとしている未来が明るい事務所です。事務員という日陰の存在ではありましたが、会社がどんどん成長していく姿にはワクワクさせられました。
ところが、成長していく会社にありがちなことが起きます。方向性の違いです。弁護士間で色々ないざこざが起こります。一人の弁護士が独立して、個人事務所を開設することになりました。
私も誘われる形で個人事務所へ移籍します。
- 弁護士1人(社長)
- 事務員1人(私)
小規模組織になりましたが、先生が色々な顧問先を持っていたこともあり、初年度から経営は安定してました。主には知的財産権保護、労働問題を多く扱う事務所でした。
事務員は私一人だけでしたので、週2〜3回は先生の奥様が来て一緒に仕事をすることになりました。仕事が出来るわけでも、やる気があるわけでもありませんが、事務所を支えようという気持ちを持っていたと思います。
家族経営の会社に私一人だけ混ざる形にはなりましたが、仕事上での問題はありません。むしろ繋がりは深かったと思います。この時は「私用を頼まれてすぎて仕事にならなくなる」とは想像が出来ませんでした。
私用は突然にやってくる…
「私用を頼まれたきっかけは何でしたか?」
あなたが、上司からの私用攻撃に苦しんでいるとして、答えられる方は少ないでしょう。始めのきっかけは些細なことだったりします。それがエスカレートしていくのです・・・。
私用1.「お昼ご飯を買ってきてくれ」
ミッション:先生のお昼ご飯を買ってくる
ストレス度:☆☆☆☆★
いつ:勤務中
思い返すと・・・まずはこれがきっかけだったと思います。
お昼ご飯を買ってきて欲しいという私用です。独立当時の先生はとにかく忙しく、一人で支えようと必死でした。先生からのお願いで、お昼ご飯を買いに行くのが日課になりました。
面倒なことですが、決して嫌だったわけではありません。先生のサポートが出来るのであれば、という思いです。今振り返ると「出勤途中のコンビニで買っておけよ!」とは思うのですが…。
私用2.「お葬式の受付をやってくれ!」
ミッション:先生のお父さんの葬式の受付を担当する
ストレス度:☆☆☆★★
いつ:勤務中
次に頼まれたのはお葬式の受付です。
「なぜ…私が?」
正直思いましたが、先生も冷静ではないのかな。葬式だから助け合いは必要だよね。と考えて担当することにしました。平日の勤務時間と重なっていたし、受付は特に難しいことでもありません。
半日つぶれて仕事は残ってしまいましたが、これっきりで終わることだし。それに先生のためなら、という思いは強かったです。
私用3.「親父の家の掃除をやってくれ!」
ミッション:先生のお父さんの家を掃除する
ストレス度:☆★★★★
いつ:勤務中
「整理を頼む」
てっきり弁護士業務の一種で書類の整理かと思いました。実際は、お父さんの自宅の掃除だったこと。ひとり暮らしをしていたため、片付ける人がいません。先生の奥さん、娘さんと一緒に遺品整理です(笑)
赤の他人の遺品整理…。事務員という名の、何でも屋に足をつっこんだ瞬間です。これがきっかけで状況は悪化します。奥さんは仕事をしなくなったうえに毎日出入り、娘さんも遊び場として使うようになります。
私用4.「海外旅行のリサーチをやってね」
ミッション:奥さんの海外旅行リサーチ
ストレス度:☆☆★★★
いつ:勤務中/勤務外残業
先生から私用を受ける分にはまだ良かったです。経営者ですし仕事面も考慮してくれていました。
ですが、奥さんは…。会社に在籍していない部外者。私がどれだけ仕事があろうが考慮してくれません(この頃になると奥さんは週2回の仕事もしなくなります)
しかも、先生が外出をすると私用を依頼してきます。そのため、正常な仕事は勤務外でやることが増えていきます。
- 海外旅行先の評判の良いレストラン
- 観光地のリサーチ
- 海外旅行に持っていく荷物まとめリスト
を頼まれました。
作業は難しくありませんが・・・。こちらは旅行に行くだけの長期休暇をもらえていません。なんだかなぁという気持ちです。
私用5.「大学入試よろしくね!」
ミッション:娘さんの受験勉強/志望校調査/願書作成
ストレス度:☆★★★★
いつ:勤務中/勤務外残業
次は娘さんの大学入試について。
勤務時間内に勉強を教えることになりました。さらには志望校調査、そして願書作成です。百歩譲って勉強はまだしても、志望校調査となると荷が重すぎです。一生を左右すると言っても良い選択を、私に委ねるなんて…。
私用6.「入院するから全部用意してね」
ミッション:先生の入院手続き/付き添い/着替え届け
ストレス度:★★★★★(MAX)
いつ:勤務外
極めつけは先生の入院に関すること全て。
初期がんの手術で入院することになったとき、全てを任されました。
- 「入院手続きしておいてね」
- 「手術の日いけないから付き添ってあげてね」
- 「着替え毎日持っていってね」
これは全て勤務時間外となりました。お世話になっている先生のことですから、100%嫌だったわけではありませんが…
「お前(奥さん)がやれよ!!」
とは常に心の中で思ってました。ちなみに行けない理由は、ランチやショッピングに行くためだそうです(笑)
最後に
この一件が決め手となり、頭の中の糸がプツンと切れてしまいました。
どこまでが事務所の仕事で私用なのかは難しいですし、個人事務所なのである程度は仕方がないと思っていました。ですが、限度はすでに超えています。
私用を手伝うことにより、法律事務所の仕事が進まなくなり、その仕事を終わらせるために残業になる。悪循環です。先生と奥さんに私用を辞めてほしいと相談をしましたが、改善する見通しもありませんでした。結局は退職という選択肢を取ることになります。
退職してからは新しく事務員が入ったそうです。ですが、すぐに退職してとのこと。やはり、私がいた空間は異常だったのだと再認識しました。家族経営は悪いことではありませんが・・・節度をもって部下を使ってほしいなと心から思っております。