「介護」
高齢化社会においては、切っても切れないものです。一口に介護の現場といっても、有料老人ホーム、特別養護老人ホーム、デイサービスなど様々な施設があります。その中で「介護老人保健施設」と呼ばれる施設で私は看護師として働いています。
介護老人保健施設(以後老健と表記)で働いて1年半が経過しました。以前は病院(病棟)で働いていたため両方を経験したことになります。
- 施設看護師の仕事内容は?
- 給料と賞与はどうか?
- 残業や休日はどうか?
- 施設と病院を比べて施設勤務のメリットとデメリットは?
この記事では「施設看護師で働くのはどうなの?」をテーマに、病院と比較しながら私の体験を紹介します。施設で働くことを検討している方の参考になれば幸いです。
なぜ施設看護師に転職をしたのか?
病院の病棟で働き始めましたが、自分にあった仕事内容でないと思い知らされました。忙しさで目まぐるしく過ぎていく毎日。言葉は悪いですが、患者さんをさばく、患者さんをこなす、そういう表現が正しかったように感じました。一人一人との時間を持つことが困難な状況です。
「患者さんによりそった看護がしたい」と考えていた私は、早々に現実を見ることになります。せっかく入った病院だったため迷いましたが、わずか1年で退職を決意します。「病院より落ち着いている施設で働きたい」と思ったのです。看護学生時代から高齢者看護に興味があったことも理由の一つとなりました。
施設看護師への転職は?
次の就職先が決まる前に退職を決めました。働きながら転職活動をするのも一つの方法でしたが、忙しい毎日、自宅に帰っても勉強が必要なことを考えると、二足のわらじは無理でした。「看護師免許があれば何とかなるだろう」という前向きな気持ちと、「たった1年で辞めたのを理由に面接で落ちたらどうしよう」という不安が、半々くらいあったことを思い出します。
結果として、活動してから2ヶ月で老健への就職が決まりました。求人サイトに載っていた応募条件は「看護師免許を取得していること」のみだったので、応募のハードルは高くありませんでした。
3箇所面接を受けて全て合格を頂くことが出来ました。その中から自分に合ってそうな施設を選択し、現在にいたります。看護師はどの現場も不足しているようですので、それも転職できた要因だと思います。
施設看護師の仕事内容は?
- 施設看護師はどういう仕事をするの?
- 看護師年数が短くても出来るの?
と不安に感じる方もいるでしょう。私は病院看護師は1年しか経験がありません。看護師としてあまりに未熟だと感じていましたが、看護師として長年の経験は求められません。
点滴・血糖測定・インシュリン注射・経管栄養・吸引ができれば大丈夫という感じでした。できなくても先輩看護師の技術確認、指導があったので問題なく仕事ができました。施設の種類によって、またその施設ごとに仕事内容に違いはあると思いますが、私が老健で行っている仕事は以下の通りです
施設看護師の仕事(老健)
〈看護分野〉
- 体調不良者の点滴施行
- 膀胱留置カテーテルの管理
- 創傷処置
- 胃ろう管理と経管栄養施行
- 吸引の施行
〈患者さんに関わること〉
- 利用者の健康管理
- 服薬管理
- 受診の同行
〈その他〉
- 長期入所とショートステイの受け入れ
- 施設内カンファレンス(他職種との連携)
- 施設医からの指示受け
老健のためオンコールではなく夜勤があります。利用者約100名に対して夜勤介護士5名、夜勤看護師は1名。看護師1人体制のため、最初のうちは緊張しましたがそのうち慣れていきました。排泄介助や入浴介助はなく、人手不足のときのみ食事介助を行います。
病院と違う点は「経営」が身近になることです。病院ではただ目の前の患者さん対応を求められましたが、老健では施設長とも距離が近いこともあり、経営に関するお言葉を頂くことがあります。つまりは、高い入居率を維持しなければいけません。長期入所、ショートステイ、緊急ショートステイなど幅広く受け入れ対応することで、現場看護師と上層部のずれが生じることはあります。そこは割り切って考えるしか無い点です。
施設看護師の給料はどう?
施設看護師の給与
私の場合(看護師3年目/施設1年半)
月給 28万
賞与 3.5月分
年収 400万
私の場合は年収400万です。月収28万円、賞与3.5ヶ月となっています。6回分の夜勤手当、住居手当、通勤手当、残業代を含めての月収となります。そのため、病院に比べたらかなり少ないです。
施設の場合は稼動が良くて、そして高回転で利用者さんが変わっていくのが経営的には良いとされています。ですが、老健では基本3ヶ月間という入所期間が守られないことがほとんどです。そのため、経営面で考えると苦労する所が多く、その分だけ病院看護師より少ないのだと思います。
病院と違って受診や薬代は施設持ちになります。収入が少なく出費がかさむとなると、必然的に経費削減でボーナスに響きます。しかし、やりたい仕事が出来ていますし、他業界も含めると文句を言ってはいけませんね。生活に不自由はないので不満はありません。
施設看護師の残業は?労働時間は長い?
残業は多くて月5時間程度しかありません。主には委員会、会議参加が理由になります。また、急変対応時も残業にはなりますが、めったに起きません。そのため、残業が全く無い月もあります。
病院に勤務していた頃は残業の嵐でした。急変や緊急入院が業務終了間際にくるなんて頻繁、他にもサービス残業はたくさんしました。施設看護師は残業がほとんど無いため働きやすい職場といえます。プライベートの時間も十分に取れるようになりました。
休日はどう?
月10日休みがあります。求人情報を見ると病院でも施設でも月休み8~9日のところがほとんどです。そう考えると休み日数は多い方になります。ただし、土日祝日関係なく、お盆・年末年始も出勤があります。これはどの施設でも似たようなものかと思います。
休みの日にいきなり出勤ということはありません。休みはゆっくりと過ごすことができ充実しています。しかし、看護師の人数が病院より少ない分だけ有給を取りにくいという側面もあります。
子育てとの両立は?
病院のような託児所はないため、そこがネックになる看護師さんもいるでしょう。しかし、勤務開始が遅いことがほとんどです。私の職場では日勤が8時45分開始となります。そのため保育所・幼稚園にお子さんを送り届けてからでも充分間に合います。私はまだ未婚ですが将来的にも安心できる点です。
また、常に日勤者が2~3名体制でいます。お子さんの都合で急遽欠勤・早退となっても問題ありません。施設看護師は病院勤務を経ていて経験が長い方が多いため、自身が働きながら育児をした経験を持つ方が多いのです。
そのため、子育てには理解のある方がほとんどで、温かいフォローをしてくれます。また、妊娠を機にやめる人がほとんどいないのが特徴です。産休・育休を取得して必ず戻ってくるのです。勤務時間の短縮が出来る為、利用している職員は職種に限らず何名もいます。病院より穏やかな雰囲気があるので、長年働く女性が多いのだと感じています。
施設看護師のメリットは?
施設看護師に興味を持っている方へ、私が感じた施設看護師のメリットを紹介いたします。
1.利用者さんとゆっくり関わることができる
「病状が落ち着いている」が老健の入所条件となります。病院と違って、急変が少なく医療処置が必要な方は多くありません。一人一人の利用者さんとコミュニケーションをとる時間を作ることができます。病院看護師時代に感じた「患者さんをさばく」ということはなく、利用者さんに応じて精神ケア、予防措置などを行えます。私が一番に感じるメリットです。
2.残業が少ない
先ほども書きましたが残業はほとんどありません。勤務時間内に仕事が終わるのがメリットです。特にお子さんのお迎え、家庭を持っている方にはぴったりだと思います。暗黙の了解であるサービス残業、そういうものも一切ないため、精神的に楽になりました。
施設看護師のデメリットは?
メリットもあればデメリットもある…。ということで、デメリットも紹介します。
1.看護師に判断を委ねられることが多い、責任が重い
病院では当直医がいますが施設では夜間帯医師はいません。特養や有料老人ホームでは医師の配置は義務付けられておらず、老健でも医師は平日日中しかいないのが当たり前です。
そのため、看護師が判断しなければならない場面が多く存在します。責任の重さがストレスになってしまう看護師も中にはいます。さらに老健は夜勤がありますが、特養でオンコール体制の場合、介護士からの電話報告の内容で判断を迫られることもあります。
- 「施設に行くのは臨床経験を10年積んでからだ」
- 「新卒や経験の浅い看護師は施設では勤まらず病院に戻る」
といった話をよく耳にします。実際、私も看護師2年目を迎えた春に病院から施設に転職し、自分の知識・経験不足に打ちのめされそうになる時があります。
2.介護士との人間関係での悩み
病院から転職した看護師が必ずといっていい程ぶつかる壁が「介護士との関係」です。看護師と介護士は仲良くなれないという話をよく耳にしていました。
転職してみたら……本当でした。
「医療」と「福祉」の立場の違いがあります。学んできたこと、そもそもの考え方が根本的に違います。そのため衝突することが多く不和が生じているのが現状ですね。中には「看護師は給与が高いのに楽している」と心無いことを裏で言う方もいます。なかなか分かりあえない所です。
最後に
- 病院看護師
- 施設看護師
両方働いてみて分かったことをまとめました。施設入所者は、病院の入院患者よりも病状が落ち着いています。その分だけ、施設看護師の仕事も落ち着いていることがほとんどです。
どちらにもメリット・デメリットがありますが、ゆったり働きたい方や高齢者の看護が好きという方はぜひ一度施設看護師の道も検討してみてください。看護師2年目で施設に転職した私でも今日までの1年半、元気に続けています。

看護師歴3年の及川です。新卒で療養型の病院に入職しましたが1年で退職、転職活動を行い現在は介護老人保健施設に勤務しています。