歯科技工士になりたい?学校に入る前にまず読んでくれ!給料は安いし、残業ばかり、歯科技工士の現実

医療関連

「歯科技工士になりたい」

そのような思いを持った方へ

 

人の役に立つ仕事でやりがいはあります。

しかし・・・

・給料は安い

・残業は多い

・歯科医にはペコペコ姿勢

 

現場に出て初めて分かったことです。

 

歯科技工士になって13年。

同じ仕事を目指す人へ。

学校に入る前に…まず現実を知ってほしい。

 

歯科技工士てなに?

 

歯科技工士の仕事

歯科医が歯型を取る〜型に合わせて指示通り作成

 

作成物

入れ歯、冠が多い。

その他にも口内に入るあらゆるものを作ります。

歯科技工士は歯を作る仕事です。歯の職人とも言われます。

 

歯科技工士になるには?

  1. 大学、短大、専門学校などで歯科技工士学科を専修する
  2. 国家資格「歯科技工士免許」に合格する

この仕事になるのは専用勉強と国家資格が必要です。

 

医療分野で…国家資格で…看護師と変わらない条件です。

「給料もざっくざくでしょ?」

そんなことを言う人がいますがとんでもありません。

 

歯科技工士の給与

新卒:約17~20万

なんと安い?!

しかも昇給ありません。

(私が経験した2社の話です)

 

歯科技工士の残業

月平均 :50時間

忙しい月:60−70時間

残業多いです…。

 

仕事はとにかく時間がかかります。毎日残業…そのわりに低賃金。

 

患者の払うお金は保険で決まっています。決まった保険点数、料金で少しでも歯医者の儲けを多くするために、料金をたたかれるのは下請けの歯科技工士です。

 

儲かるのは、歯科医ばかり…(小声)

 

歯科技工士/新人時代

 

ここからは私の体験談を書いていきます。

 

歯科技工士の国家資格を無事取得。いよいよ仕事ができる!私は希望を胸に就職しました。就職先は、院内ラボという歯医者の中にある歯科技工所です。

 

入社初月は、上司や先輩にとても大事に育ててもらいました。2ヶ月目になると戦力扱い。仕事量が一気に倍増します。2ヶ月目以降は定時に帰ることはなくなりました。

 

「自分の腕が悪いんだな」

「もっとスキルを磨いてスピードアップしないと」

と前向きに捉えていました。

 

とはいえ、他の職場に勤めた同級生(歯科技工士)に話を聞くと、明らかに仕事量が多かったのです。どれだけ技術を磨こうが定時に終わることはない、そう確信したのもすぐだった気がします。

 

3ヶ月目にはさらに仕事量が増加。

毎日24時を超えての仕事です。

(今考えると相当頑張っていました)

 

晩御飯はいつも夜中。朝はギリギリまで寝たいので食べる時間はありません。不健康サイクルの完成です。

 

歯科技工士みんな疲労困憊

 

深夜まで仕事、生活リズムは最悪。そんな中では良い仕事が出来るわけありません。出社してもお昼頃までボーとしたまま。その状態で仕事です。もちろんその日も夜中まで残業。

 

こんな状態で「良いものが作れる訳ないでしょ!」

 

みんな遅くまで仕事しているので会社内もギクシャク。助け合いの精神はありません。もうみんなが疲労困憊だったんでしょう。

 

「意地悪い感じな、全員性格悪いな」

 

と思ってました。とはいえ私も周りに思われていたかも…。ミスしても助けようとはしません。それどころか無視です。同じ職場にいるのに個人で仕事している…そんな空気感が流れていました。

 

休みは遊びたいのに寝るしかない

 

仕事は忙しかったですが休みはあるんですよ。週休2日。平日と日曜日、祝日。でも日々、午前様の生活で休みの日に何をするかというと・・・ゆっくり寝たい。

 

20歳そこそこの女性ですよ。自分でいうのもなんですが女性にとっては華の年代。美容室行ったり、買い物したり、デートしたり、ごはん食べに友達と出かけたい。

 

「それより寝たい」

としか思いません。

 

遊ぶ暇も体力もないんです。

「あー老けたわ」て思いましたね。

 

それでも、1年間この生活をがんばりました。「絶対やりきってやる」て意地です。私が負けず嫌いのせいもあります。4月になれば新卒が入って来ます。良い先輩でいたいですしね。

 

新卒が無事入社してきて5月を迎えます。昨年、私の仕事が倍になった月です。でも新人の一人だけは全然仕事が増えないんです。周りと比べて半分くらいしか出来ない子でした。

 

「出来ないなら仕方ないね、少しずつやればいいよ」

上司がそのように声をかけていました。

 

私もそうだねって言いたかったのですが…糸がプツンと切れた気がしました。1年間必死で頑張って、人よりも多い仕事をこなして、毎日深夜残業で。「私、会社のためにがんばりすぎたんだわ」ということに気づきます。

 

このように書くと私が小さい人間のように聞こえます。まだ半人前の新人に優しくするのは当然ですからね。ですがその優しさは偽り。その子は結局2ヶ月で精神的に追い詰められて退職していきます。

 

周りが深夜残業している中、半分しか仕事がこないわけです。それでは周りからの視線がこわい。そして誰も気づかってあげる余裕が無いんですから。

 

「出来ない奴には教える時間すらかけられない」

「出来ないって事は向いてないよ」

「早く辞めてくれよ」

というサインです。言葉にこそ出しませんがそんな雰囲気が見え見えです。仕事ができる人には山ほどの仕事を押し付ける会社、業界。そんな光景に嫌気がさしていきます。

 

限界を超えた生産量

 

依頼してくる歯科医がいなければ私達の仕事はありません。

 

ですが、それには限界や限度があります。取引先はとにかく安くたくさん作らせたいわけです。会社は下請けに近い存在でしたので、社長や上司は歯科医にペコペコ。言われたとおりに安請け合いで受注を取ってきます。そのしわ寄せがくるのは私たち歯科技工士です。

 

会社への不信感を持っていた私は、前よりも作成スピードが落ちていました。というよりは人並みに落としたといえます。無理して根性で人一倍作るのは限界だったんです。

 

作る量はチームで決まっています。先輩や上司からしたら「なぜそんなに少なくなったのか?」と疑問に思ったはず。手を抜いていると思われ無視されるようになっていきます。

 

それよりもひどかったのが、仕事量が1日に2日分近く配られたことです。朝出社すると毎日机に指示書が山積み。患者の予約日に合わせて納期がありますが、納期日は翌日。急ぎの仕事ばかり強制させられます。

 

もう笑うしかありません。終わらないと帰れないんです。それも2日分の仕事。その日から、ほぼ家に帰れなくなりました。

 

「すいません。風呂入りに帰らしてください」

「着替えて来ていいですか」

断わりを入れて帰宅。5時間も帰れれば良いほう。布団でぐっすりともいきません。タイムカードはいつの間にか定時で押されています。残業隠しってやつですね。

 

「どんなに長い時間働いてもたいした給料じゃない」

「そんなことより給料いらないから辞めさせてくれ」

心がそう叫んでいます。本気で自殺しようと思ったことも。

 

なかなか辞めれない理由は?

 

ここまで読むと本当にひどい仕事に聞こえると思います。しかし書いた内容は本当にひどい時の話。1年中365日そんな日々と言うわけではありません。それでもきつい仕事であることに変わりはありません。

 

「辞めればいいじゃん?」

友人に何度も言われました。

 

ですが、歯科技工士の資格を取るのに両親にはたくさんお金を出してもらいました。自分で決めた職業です。それが直ぐに辞めれなかった理由です。

 

入社当日、遠距離の彼氏がいました。もちろん続きませんでした。恋愛なんかする時間はありません。忙しさばかりが原因じゃないけど。 3年我慢しました。両親には悪いけど…当時の彼氏には悪いけど…

 

「ここまで頑張ったから、もう辞めてもいいかな」

 

結婚したいし、子供も欲しい。それなら、恋愛できる時間がないと。

ようやく退職という道を選びました。

 

歯科技工士に復帰して10年が経ち…

 

技工士を辞めて、結婚、子供もできました。そして子供が小学生になるタイミングで歯科技工士に復帰しています。仕事復帰しようかなと考えた時に、真っ先に思い出したのが歯科技工士の資格。

 

「仕事的には嫌いじゃない」

「環境がつらかっただけだからダメなら辞めればいいや

「無理だけは絶対しない」

 

その決意を胸に再就職して10年になります。

 

結論から言うと、何年たっても変わっていません。歯科技工士で働いて13年、働いていない時期も入れると20年近くたちます。それなのにです。

 

これは業界全体の問題です。どこも大して変わらない。現在の職場は、前と比べると人数がたくさんいます。休んでも代わりがききます。

 

「若い頃のように自分が意地っ張りじゃなくなった」というのも続けていられる要因ですね。子供がいるので周りも目をつぶってくれますし。そして、年齢を重ねた分だけ逃げることがうまくなったし、何でも言えるようになった。

 

若い頃より図太くなったから「残業しても2時間だけね」と軽口をたたけるようになっています。 だけど、若い子はもっと遅くまで愚痴を言いながら必死でやっています。まるで私の新人時代のときのように。

 

とはいえ、私も結局は長時間残業しています。残業代は支給されません。給料だって高くはありません。それでも、私が歯科技工士にこだわったのは両親に取らしてもらった資格だから。そして、主婦が正社員でまともな給料をもらうには資格に頼るしかなかったから。嫌なことも我慢して働いています。

 

最後に

 

歯科技工士は誰かの役に立つ、誰かがやらないといけない仕事です。

 

でもその理想を超えるほど厳しい現実が待っています。この記事を読んでくれたあなたは今どんな立場かは分かりません。これから資格を習得するのか、あるいは学校に行くことを考えているのか。

 

「あなた自身がこの環境でやっていけそうか」

後悔する前に自分に相談してみてください。