「新卒で入社したら3年は続けるべき」
この言葉をよく聞きませんか?
- 3年続けないと仕事が見えてこない
- 辞めるのは情けない
- 次の就職が不利になる
理由は様々です。決して間違ってはいませんが「3年」という期間は貴重です。ムダに費やしてはいけません。
僕は新卒入社した会社をわずか1年で退職しました。専門商社の海外営業、周りからは「もったいない」と言われましたが、僕にとっては続ける時間のほうがムダでした。
英語を活かせる…と思ったのに
僕は「英語学部出身」です。在籍中は留学をして語学力を高めてきました。将来は英語を活かした仕事につきたい、それが願い。
また、海外という存在に少なからず憧れがありました。海外出張や駐在員としてバリバリ働く営業マン、そんな姿を夢見ていたのです。
入社したのは専門商社です。海外へと展開をしており部署として「海外営業」が存在しています。僕が配属されたのも当然海外営業です。
しかし!
名前だけの残念な職場でした。
入社前「1年目から海外に派遣させているよ!」
↓
入社後「え?海外?そんなの無いよ」
全然話が違うのです。
朝礼が意味不明?!なんの宗教?時間外だけど?
入社して早速腰をぬかしそうになります。会社を創設した会長を崇拝するような内容です。
- 会長部屋へ向かって挨拶
- 円になって唱和する経営理念
- 交代制の前で朗読する小冊子
- 両手が真っ直ぐになってないと全員の前で受けるお叱り
- ラジオ体操
しかも朝礼は時間外で行われます。
出社 7:15(来てないと怒られる)
朝礼 8:00~8:45(45分もある)
定時 8:45〜 (やっと仕事)
他県からの通勤者は「始発」で来ているようでした。
英語を活かした仕事は?関係のない業務ばかり…
朝礼で面食らいましたが、それでも仕事することは楽しみでした。「海外案件をいつ担当できるのかな!」ワクワクして毎日やる気満々で働きました。
「展示会や商談など、チャンスがあればいつでも海外に行かせてあげよう」は社長の言葉。それを支えに日々を過ごしていました。しかし、現実は無情です。実際は一日中社内でパソコン業務。
残業は日平均4時間ほど。約13時間も全く関係のない事務仕事をひたすらやるだけ。次第に抜け殻のようになっていきます。学説や戦略など全く必要無い業務ばかり。
貴重な休日の土曜日に「勉強会」に呼び出され、一冊の営業ノウハウ本を音読して感想文。8時間も文章を書かされます。一か月に一回は「朝会議」に呼ばれ、朝の7:30から「掃除の大切さ、身の回り整頓」についての経営陣の長い話を聞かされる。
「こんなの当たり前じゃないか!」と思う方もいるでしょう。入社して「仕事とはなんたるか」を学ぶことも大事なことは理解しています。ただ、海外営業の仕事=外資系を想像していたため、ギャップをすごく感じたことも事実です。
「英語を活かした仕事がしたい」
強く思っていた僕にとっては、全てがムダな時間なのです。
部下の手柄は上司のもの!
数年前にヒットしたドラマ「半沢直樹」で、半沢の敵役であった部長が言い放った言葉です。「ドラマの世界はすごいな」と当時見ていましたが、現実となって降りかかりました。
直属の上司が「一番の厄介者」と陰で呼ばれている人物。彼はバブル後の厳しい営業生活を生き抜いたことでとにかくプライドが高い。「早朝から深夜まで仕事、帰りはカプセルホテルで寝る。昼休憩は自分の机で5分で食うのが営業だ」という時代遅れな考えを持っています。自分がやるならまだしもそれを皆に押し付けます。
直属の部下(僕)が定時で帰るなんてありえない。20時でも早い。21時過ぎでようやく認められる。会社へ長時間残るほど嬉しそうな態度を取ります。
その上司もきり詰まった業務はありません。むしろ仕事よりも口が達者。周りの社員へ「営業とは何か」といった話を延々としています。口癖は「仕事ができる人は、メールは家でも日曜でも返信する」です。
「いい加減聞き飽きているよ、何十回目話せば気が済むんだよ…」
さらに言うと、僕たちが勤めるのは海外営業です。残業をしたところで顧客は夢の中です。時差を分かっていないのでしょうか。
僕はそんな上司に嫌気をさしながらも、営業として顧客を取ろうと必死になります。結果を出せば海外で仕事させるという社長の言葉を信じていたからです。帰宅してから夜中、海外へメールや営業電話を入れていました。
顧客はすぐには手に入りません。何日も何日も繰り返すことでようやく顧客になってくるのです。努力して取得した顧客を上司に報告です。今思えば間違いでした。
「ここからは僕が連絡して営業のやり方を見せてあげる」と言ったきりリストへ加えてしまいました。そして、自分(上司)が取得したことになって社長へ報告されています。僕の顧客は上司へ取られるので「成績はいつも低迷」です。
「まだ新入社員でほんと至らぬ所ばかりで」と裏で言っていたそうです。まさに、部下の手柄は上司のものを再現させてくれる人物です。今でも顔を思い出すと怒りがこみあげてきます。
海外?なにそれ?君がやる意味ある?
「海外?なにそれ?」
「そんなこと言ったっけ?」
「君が行く意味ある?」
どうしたら海外で仕事が出来るか、を社長へ聞いた際に返答された言葉。確かに聞き方は悪かったかもしれない。まだ1年目の新人だから生意気なのかもしれない。
それでも、入社前に聞いていた話とは全然違います。さらに言うと、この一年で海外へ派遣している社員は誰一人いません。そもそも、そんな話は無くて「将来的にはってことだよ」とはぐらかされました。
「あ、ダメだ。この会社、社長、上司、社風、全部が」
最後に
両親からは反対されましたが1年で退職を決意します。「3年は…」とお決まりの文句が返ってきましたが、あと2年も過ごすのは想像が出来ませんでした。その先には「空虚」しか待っていません。
「一年で辞められるのはすごく迷惑」は迷惑上司。
「お前18時に帰れると思うな!これまでの恩返し含め20時までおれよ」と脅しのように怒鳴ってきます。さらに会議で「○○さんが辞めることで色々圧迫されて大変ですが」と僕の前でコメントを入れる。「君の送別会の話は出てる?どれくらいの人が送別会開いてくれるかで君の職場での価値がわかるよ」と言ってきたり。
辞めると決めてからの1ヶ月も苦痛で人間不信に陥ってしまいます。憧れていた「社会で働く大人の世界」は実際はこんな歪んだ場所だったのか…これからの人生に希望が持てなくなります
心待ちにしていた出勤最終日はとてつもなく晴れやかな気分で会社を出ました。その後は海外にワーキングホリデーに行きました。街並みが美しく人もおおらかです。職場でもネチネチいじめのように接してきません。仕事を辞めてお金は無くなりましたが、ストレスも無くなり本当に良かったと思います。