「清掃業」
この言葉を聞いて何を思い浮かべますか?
公共施設、病院、トイレで一生懸命に掃除しているおばちゃん。この姿が浮かんできたのではないでしょうか?
私はそのおばちゃん達をまとめる側、社員として清掃会社に就職しました。当時は年齢28歳の男性です。まさか、こんな大変な仕事だったとは…。
- 給料安い
- きつい
- 残業多い
私はこの3重苦で清掃業を辞めました。この体験が誰かの役に立つことを願って、記事にしていきます。
大型病院の責任者を任された!それが苦行のはじまり
清掃業の特徴として、任されている持ち場によって勤務体系が変わることです。
一般企業、病院、イオンでは営業時間(開いている時間)が違います。相手側にあわせて勤務時間が求められるのです。
清掃業を始めて2年がたった頃、社長に呼び出されました。
「来年から〇〇病院の責任者は君ね!よろしく!」
〇〇病院は有名な大型総合病院です。
うちの会社にとって重要な取引先です。清掃具合がいまいちと一度でも悪い印象を与えてしまうと、あっさりと契約が切られてしまうかもしれません。
プレッシャーを感じつつも断ることは出来ません。二つ返事で「がんばります」と答えていました。これからとんでもない苦労が始まるとも知らずに…。
「わずか2年で重要なポストまわってきたの?すごいね!」
このように思われるかもしれません。
決して私の能力が高かったわけではありません…。退職者が多かったのが理由です。ブラック企業あるあるですね。
【清掃業】1日のスケジュール
持ち場によっても当然違いますが、私が体験していた1日はこのように進みます。
清掃業1日スケジュール
- 3:00 起床、準備、通勤
- 5:00 勤務開始
- 12:00 昼休憩(責任者は打ち合わせで短め)
- 13:00 作業再開
- 16:30 清掃完了、ミーティング
- 17:00 パートさん作業終了
- 17:10 責任者の仕事開始
- 18:30 日報、書類作成、打ち合わせ
- 20:00 勤務終了
5時から20時まで15時間勤務です(笑)
現場も自宅から遠く、往復で3時間かかります。自宅は帰って寝るだけの場所です。社長は「早く帰っていいよ」と言ってはいますが、結局は口だけです。実際に改善する気はありませんでした。
この過酷なスケジュールを月曜から土曜まで。月の休みは月6日(日曜+祝日)だけ。パートさんが突発で休むこともあり、日曜出勤になることも多々ありました。
定時なんてあってないようなもの…。月残業は200時間を超えています。体と精神がどんどんボロボロになっていくのを自覚していました。
勘違いしないでください!清掃業は「責任者」がきついのです
「掃除のパートしようと思ったけど…やっぱり辞めようかな」
この記事を読んでそう思う方もいるでしょう。
勘違いしないでください!きついのは「責任者」なのです。
私は社員として入社しましたが、始めは仕事を覚えるためパートさんと同じ仕事内容をこなしていました。病院や介護施設の日常清掃と定期清掃(ワックスがけ)が中心です。
勤務時間は9時から18時です。休憩時間がしっかり取れており充実していました。
責任者になるとそれが一変。勤務時間の長さは先ほど書いたとおりです。1日あたり5時間も勤務時間が増えています。
「給料は増えたのか?」
これは微々たるものです。責任者手当が毎月5000円出るだけ…。時給換算するとパートさんの方が稼いでいます。
次に「人をまとめる大変さ」です。これがとにかく難しいし頭を悩ませたのです。大型総合病院の清掃業務となると、20人以上のパートさんをまとめないといけません。
入社3年目の私に対して、ペーペー扱いすることは日常茶飯事。パート同士が冷戦になりもめることが何度もありました。
お局様の対応が一苦労
女性職場にはお局が必ずと言っていいほど存在します。
4月の立ち上げ当初から、幅を効かせていた年配のAさん。その雰囲気を察知していたので、大きな顔をさせないよう、気にかけて接していました。
しかし、3ヶ月もたつと抑えが効かなくなり、お局が圧倒的な存在になります。「あの人に逆らうと仕事できない」という雰囲気に…。
お局がパートへ直接悪口、陰険ないじめに近い行為。他のパートは見て見ぬふり。責任者である私への告げ口。勇気を出してお局へ進言するもの。耐えられず辞めていく方。
書ききれないたくさんのことが起きました。その争いごとを止めるのは責任者である私の役目です。
ヒートアップしているお局様はどうにも出来ず、社員である私にも罵声を浴びせてきます。怒りの感情を抑え、「我慢、なんとか我慢…」と自分に言い聞かせていました。
そんなストレス状態では良い睡眠が出来るわけありません。だんだんと不眠に悩むようになっていきます。
ストレスで心筋症を発症
- 1日平均勤務時間が15時間
- 休憩もほとんど無し
- 月の休みも少ない
- パート同士の揉め事
- 社長は見て見ぬふり
こんな地獄の世界に足を踏み入れて7ヶ月。とうとう体調がおかしくなってしまいます。
胸がズキンズキンと痛むのです。始めは軽い違和感、ですが次第に症状は悪化していきます。胸が締め付けるような痛み、呼吸が苦しく起き上がれない状態にまで。
少し経つとおさまるのですが、「このままでは死ぬかもしれない」という不安から病院へ行くことに。
「心筋症の症状が出てきているのかもしれませんね」
始めて聞く言葉。でも正常ではないことは確かです。
心筋症
疲れ、ストレスなどから心臓の筋肉が弱る病気
勤務内容、長い拘束時間、休みの少なさ、不眠。いろいろなことが重なっているのが原因ではないか、とのことでした。仕事環境を改善しないと、症状は良くならないとの忠告。
診断書を見せて社長へ勤務改善を直談判。
「え?人手足りないから無理だな」
「何とかならない? 頑張ってみて」
あまりの冷酷さに絶句。社長の対応や言動に驚かされたことは何度もありましたが、今回は限度を超えていた気がします。
「辞めれば?」と彼女が言ってくれて安心
社長とのやり取りを録音してました。当時同棲していた彼女(今は奥さん)と一緒に聞き返し一言。
「もう辞めれば?」
あっさりと言ってくれました。
こんな人についていく意味が分からない、何より体調が一番心配。そう言ってくれて心が軽くなりました。
冷静に考えたらその通りです。安月給だし良い点なんてありません。この社長のもとで一生働くこともアホらしいです。激務過ぎて思考が止まっていました。
彼女には感謝です。あの時一人で悩んでいたら答えが出せず、ズルズルと続けていたかもしれません。
いきなりの退職宣言!
退職を決意してからは気持ちがすっきり。「インパクトのある辞め方をしてやろう」と日々考えていました。性格が悪いですね(笑)
4月になり新年度の社員総会がありました。幹部、社員、パートが今年の抱負をのべていきます。社長が最初、次に幹部が一人一人登壇していきます。
とうとう私の番がやってきました。
「目標はありません!」
「今月で辞めます」
突然の退職宣言で周りの人たちは「ぽかーん」です。それとは裏腹にスッキリ爽快!気持ちよく退職宣言が出来ました。
最後に
それからはバタバタしていましたが、無事に退職。
パートと社員は辞めないでと引き止めてくれました。しかし、肝心の幹部からは何もありません。「お疲れ」の一言もなく会社を去ることに。
その後、違う仕事へ無事転職が決まりました。清掃の仕事は楽しかったですが、責任者は本当につらかったです。今後戻ることはないでしょう。