15年働いたベテラン作業療法士が教える!作業療法士のメリット・デメリット

医療関連

私が勤務しているのは、介護老人保健施設という介護保険関連の施設のひとつです。病院と在宅の中間施設と呼ばれており、在宅での生活が難しくなった高齢者が自宅生活に戻れるようリハビリをします。

 

作業療法士は3名で入所(長期のお泊り)100名とデイケア(数時間の通い)20名の利用者様のリハビリを担当しています。利用者は体の障害だけでなく、認知症や精神疾患の方もいます。

 

現在15年目になりますが、入職当時を思い出すと2週間程度の新人教育後すぐに30名強の担当受け持ちとなりました。多少の変遷はあるものの、仕事内容は大きくは変わりません。

 

作業療法士の仕事は?

 

高齢者施設で働く作業療法士の主な仕事です。

・利用者のリハビリ

・書類作成

・福祉用具の選定、適合

・利用者、家族との面談

・職員会議

・利用者に関わる他事業所との会議

・自宅訪問

・実習生の指導 等

仕事内容は勤務する領域で違いはでてきます。

 

スケジュールは

9:00〜9:30  朝の申し送り

9:30〜11:30 リハビリの提供

11:30~12:30 会議、書類作成

12:30~13:00 昼休み

13:00~17:00 リハビリ提供

17:00~18:00 書類作成

※合間に訪問や会議、実習生の指導

大抵の時間は利用者とのリハビリです。またこのリハビリの時間ずっと体を動かしています。一人終わったらすぐ次の人が待ち構えています。

 

基本的にリハビリは本人に頑張って体を動かしてもらうのですが、何らかの障害をもっていたり、加齢で動かしにくくなっているため、こちらが支えたり、引き上げたりすることも多々あります。

 

体力は必要不可欠です。

 

またリハビリ中の会話はもとより、他の職種との連携や家族との面接等、コミュニケーションスキルも必要とされます。なかなか自分の家族の障害を受け入れられない方、家族内での介護問題、看取り等が絡んできます

 

作業療法士のメリット

 

まずは、自分が15年働いて感じたメリットについてあげてみます。

1.やりがいがある

2.給料が安定している

3.自己研鑽が図れる

4.転職しやすい

 

1.やりがいがある

 

対象者がリハビリを頑張っていくなかで徐々にできなかったことができるようになっていくこと、それを本人や家族、他の職種と喜びあえることは素直に嬉しいことです

 

「先生のおかげです。ありがとう」と言われた時や笑顔で施設を退所して自宅へ戻る場面を見た時は「この仕事に就いてよかったな~」としみじみ感じます。

 

2.給料が安定している

 

作業療法士の給料は平均で400万です

 

給料は働く領域や地域によって異なります。大きな病院や人の集まらない過疎地は比較的高いです

 

私は15年目で年収は540万くらいです。共働きで普通に生活できる金額なので、まあまあ満足しています。

 

3.自己研鑽が図れる

 

職場での研修に加え、都道府県や全国での作業療法士協会があり、入会すれば定期的な研修会や学会に参加することができます。

 

自分で探してもすぐに多くの研修を見つけることができます。時間と経済的な余裕があれば、スキルアップができます

 

4.転職しやすい

 

作業療法士は国家資格であるため、転職はしやすいほうだと思います。

 

常勤で働いている人がほとんどですが、ライフスタイルの変化に合わせてパートや非常勤に変更する人もいます。

 

また、身体領域、精神領域、老人、小児、地域や教育など幅広い分野で活躍できるため、途中で自分が興味のある領域に変えることもできます。

 

作業療法士のデメリット

 

次にデメリットをあげてみます。あくまでも私が感じたことですが。

1.人との付き合いに疲れる

2.体がしんどい

3.自己研鑽につかれる

4.資格を得るまで大変

 

1.人との付き合いに疲れる

 

業務中、パソコンに向かう時間もありますが、ほとんどは人と接しています。対象者はもちろん、家族や他の職種とうまくかかわる必要があります

 

やる気のない対象者の気持ちを引き出したり、到底無理な要望を突き付けてくる家族の気持ちに寄り添いつつ適切なゴールに導いたりと「正直メンドーだな~」と思ってしまうこともあります。

 

2.体がしんどい

 

リハビリの時間中はほとんど体を動かしています。(認知面や精神面にアプローチする時間もありますが)

 

長期間寝たきりで筋力のない人の乗り移り介助、足元フラフラの歩行介助は力を使います。

 

相手に気を使わせないよう、不安にならないよう「大丈夫!私プロだからこんなの余裕~」といった表情で淡々とこなしますが、実際終わった後手がプルプルすることもあります。

 

若く体力気力のあるうちは何とかなりますが、年を取った時、体を痛めてしまったときはきついでしょうね

 

日々の体のケア、自分の体を痛めない正しい介助の仕方が求められます

 

3.自己研鑽につかれる

 

作業療法士ばかりではありませんが、仕事を進めていく中で新しいことを覚えるというのは当たり前のことと思います。

 

対象者のデマンドをかなえていくためには、己の知識、技術とも向上させていかなくてはなりません。私は新人の頃、卒後教育として土日に行われる研修や、平日の夜に卒業学校の教授が開いて下さった勉強会、有志で近隣の作業療法士が集まった勉強会に参加していました。

 

私の同僚には休日に自費で何万も払い、セミナーに通っている人もいます。職場に申請すれば業務時間内にお金を補助して行かせてくれる場合もありますが、何回もは無理です。

 

私は恩師に「8時ー17時だけの作業療法士にはなるな」と何度も言われました。※勤務外でも勉強し上へ行けという意味

 

「プライベートでも作業差療法士としての気持ちや視点を忘れるな」という意味と「しっかり業務時間以外も研修やセミナーに行けよ」ということです。

 

私の偏見かもしれませんが、作業療法士の皆さんの多くは、仕事終わりや休日に研修にいったり、ボランティア活動することを当たり前に感じている人が多いように思うんです

 

職場や周りの作業療法士の雰囲気によりけりとは思いますが、そうしない人がむしろやる気のないダメな人や変人扱いされます

 

4.資格を得るまで大変

 

作業療法士は国家資格です。毎年2月ごろに行われる国家試験に合格することで取得できますが、受験するためには、学校養成施設を卒業して受験資格を得る必要があります

 

始めは生理学や運動学、解剖学等の基礎的な知識を学び、座学に加えて少しずつ実習が始まります。最後の頃は実習と国家試験対策がほとんどを占めます。

 

実習は実習先の病院や施設の作業療法士の指導を受けつつ進められます。この実習、指導者により命運がわかれます。良い意味で熱心な指導者にぶち当たるとブラック企業並みの待遇を学生のうちから経験することとなります

 

国家試験は合格率80%前後です。80%という数字をみると簡単に受かるように思えますが、養成校でそれなりに学び、こいつなら合格するだろうと判断された人が受験しているので、それほど簡単ではないと思います

 

養成校も卒業生の合格率を下げたくないためダメだと判断した学生は容赦なく留年させるところもあります。

 

さいごに

 

私自身は作業療法士という仕事に満足しています。デメリットとして挙げた点は勤務する職場の雰囲気に大きく左右されます。

 

作業療法士としてではなく、どこに勤めるかに左右されますので、就職時はその職場についてよく調べましょう。