はじめまして、僕は都内のレストラン、厨房で料理人として働く39歳男性です。
「料理人はどうなの?」
「修行時代のエピソード」
今回はこの2つを記事にします。
過去に書いた料理人記事
僕が料理の世界に入ったのは30歳(料理学校入学)です。高卒で働く料理人とは一回りの差があります。かなり遅いデビューと言えます。ですが、現在は一人の料理人として生計を立てています。
これから料理人になりたいと思っている方へ。遅咲きで料理人を経験したエピソードを交えながら、「料理人の世界」について知って頂きたいと思います。
料理人になるか迷う?料理人と一般企業は全然違うことを知っておきましょう
さて、皆さんは料理人と聞くと、どんなイメージをお持ちですか?
このようなことを想像するのでは無いでしょうか。
料理人のネガティブイメージ
- きつい
- 給料が安い
- 休みがない
「一般企業に入ろうか…」
「それとも大変だけど料理人になろうか…」
料理人になる前に一度は迷うことだと思います。ですが、料理人と一般企業は全くの別物です。僕は社会人を経験しているため、痛切にそれを実感します。
1.スキル1本で生活できるため好きな土地で勤務できる
→会社員はその会社でしか通用しないことが多々
→就職先がないところもある
2.将来独立して自分のお店を持つことが出来る
→会社員では難しい
3.転職すればするほど印象が良くなる傾向にある(経験を積む)
→一般企業ではマイナス
この3点が大きく異なります。
そのため、料理人と一般企業では単純に比較が難しいといえます。自分がどう働きたいのか、どういうキャリアを作っていきたいのか、を考える必要があります。
単に料理が好きでは務まらない仕事です。自分の腕を磨いてスキルをつけたい。そのスキルを使って日本全国、あるいは世界中。好きなところで活躍したい、と考える方には「料理人がぴったり」です。
なぜ料理人の道へ?
僕がこの仕事を選んだのにはいくつか理由はいくつかあるのですが、主な理由は2つです。
1つ目は手に職をつけたかったこと。極端な話包丁1本あれば、全国を始め世界中で仕事が出来るのは魅力的でした。
2つ目は料理が好きだったこと。母親が夕飯を作っているのを手伝うのが好きでした。大人になってからも料理への気持ちは変わることがありませんでした。
2つともすごくシンプルな理由です。だからこそ料理人として毎日仕事ができているのだと思います。
料理人になるために調理学校に行ったほうがいい?
- 学校に入って学んでから働く
- 実際に働きながら学ぶ
料理人への道は2つです。どちらを選んでも最終的には飲食店に入り修行します。そのため、大きな違いはないですが…。
「調理学校に入って勉強する」
もし時間とお金が許すのであれば、僕は学校に入ることをオススメします。それはスキルを習得する目的ではなく、同じ熱い思いを持っている料理人の卵と知り合うためです。
僕が調理師専門学校に入ったのは30歳の時です。同級生には10代から60代までの幅広い年代の人がいました。料理への思いを共有し大きな刺激になりました。
卒業した今でもご縁は続き、頻繁に連絡をとる友人が何名もいます。それぞれの店舗仕事を共有したり、テクニックを教え合ったり切磋琢磨できます。「違うお店で働きたい」と思えば全員で意見交換会です。
「あいつが頑張ってるんだから僕も…」
修行でくじけそうになった時にいつも思っていました。これは同じ時期に、同じ学校で学んだ同期だからこそ感じるライバル意識です。
また、卒業が近くなった頃に実習先のホテルから就職オファーが来ました。就職活動もなく採用が決まったのは学校のおかげですし、他友人も就職は引く手数多でした。料理人の数は足りていない中で、調理学校卒業者は貴重な人材といえます。
厨房ではどういう仕事をするのか?
働く場所によって多少の違いはありますが、料理人の主な仕事です。
- 仕込み
- 営業時間の料理提供
- 掃除
- メニュー作成
まず仕込みについて。これはOPENまでに必ずやる必要があります。朝出勤して最初にやる作業が仕込みです。ここでつまづくと営業が出来ないため、非常に重要な仕事といえます。
- 冷蔵庫の在庫を見る
- その日使う食材の確認
- 食材の下処理
そして、営業時間はとにかく料理を作る。これに全エネルギーを使います。お店によっては目が回るほど忙しい時間です。スタッフ全員がバタバタする中で、どれだけスムーズに料理を作れるのか、それは準備と経験しかないです。
営業が終わった後は厨房をきれいに掃除します。鍋、フライパン、床、コンロまわり、作業台、そして冷蔵庫の中まで。
料理人をしていて一番怒られるのが掃除をサボった時です。料理人はキレイ好きが多いです。食品を提供する立場ですから当然といえば当然です。
掃除文化は徹底的に弟子へと叩き込まれるため、自分が教える立場になった時も口うるさくなります。僕も例外なくキレイ好きになりましたし、後輩に一番怒るのも掃除です。
修行時代は何をするのか?
料理人の働き始めは「修行」と呼ばれています。
- 何年まで修行?
- どうなったら修行が終わり?
- 料理はさせてもらえないの?
いろいろな疑問があると思いますが、どれも明確には決まっていません。中には「10年間は修行!鍛錬しなさい!」と言う厳格な料理人もいます。
僕の修行期間は1年だけでした。それも「今日で修行は終わり!明日から業務ね!」と言われたわけではありません。調理の仕事、担当を任され始めた時に、修行は終わったのかという印象でした。
修業中の仕事
- 仕込み
- 掃除
- 調理の補助
修行中の仕事はこの3つだけです。とはいえ、最初はかなり大変だと思います。
例えば、野菜をシェフが指定した大きさにカットする場合、数ミリでもサイズが違うと怒られます。ひどい時にはせっかく準備した食材を捨てられることもあります。※賄いとして使われます
さらに、営業中は修羅場。
「おい!何やってんだよ!ぼさっとしてねーで、早くしろよ!!」
と怒鳴られることは日常茶飯事。
そんな毎日を過ごしていくうち信頼を勝ち取っていきます。そこまでいくと調理へのステップアップ。簡単な付け合せメニューからチャンスを貰えるようになります。
「修行…きつそう…」
そう感じる方もいると思います。
ですが、そんな修行を乗り越えたシェフたちがたくさんいるおかげで、僕たちは美味しい料理を食べることが出来ています。厳しい修行の先には、楽しくてやりがいのある毎日が待っています。
修行時代のエピソード
ここからは僕の修行時代エピソード、いくつかご紹介したいと思います。
右も左も分からない1年目、鍋が飛んできた!
調理学校を卒業、入社したのはホテル内レストランでした。意外と厨房は狭く、息苦しく感じたのを覚えています。
でも同時に、ここから料理人人生が始まるのかとワクワクしてました。しかし、そのワクワクは入社して1週間で粉々になりました。
週末のディナータイム、週末の中でも特に忙しい1日となりました。予想以上に注文が入り、厨房全体がまるで鉄火場。経験のあるシェフも仕事の多さにイライラしていました。僕も何が起きているのか理解できないほど右往左往。とにかく走り回っていたのですが、師匠から鬼の一言。
「いつまでそんな事してるんだ!仕事が遅いんだよ!」
怒鳴られた3秒後、調理で使い終わったフライパンが飛んできました。
「フ!フライパンが飛んできた!」
あの瞬間に感じた驚き。一生忘れることはありません。
その後も、事あるごとに怒鳴られる。今度は鍋が飛んでくる。包丁を向けられたり。非日常の体験が待っていました(笑)
それでも不思議と師匠を嫌いにはなりませんでした。なんだかんだ愛情を感じていましたから。そして、「師匠みたいな料理を作れるようになりたい」と強い想いが勝っていました。今ではこうして記事に書けるくらい良い思い出です。
転機の3年目!いきなりメイン場に抜擢されて四苦八苦
そんな(楽しい?!)毎日はあっという間に過ぎていきます。
ホテルに入って3年目、大きな衝撃がありました。師匠が別のセクションに異動になります。同時に先輩が急遽退職。僕がメイン場を任される事になったのです。
メイン場は厨房の花形です。それこそ、お客様にお出しする全ての料理に責任を持つ場所。正直、自分にできるだろうかと不安はありましたが、同時にチャンスを掴むのは今だと思ってドキドキしたのを覚えてます。
ちなみに、メイン場には毎月のメインメニューを決める仕事も含まれていました。
- お肉は牛、豚、鶏、羊など何のどの部位を使うのか?
- ソースはどんなソースにするのか?
- 魚料理は何にするのか?
- 野菜は何を使うのか?など
料理全般のことを考えなければいけません。本当にしんどかったですが、わずか3年目にしてかなり貴重な経験をさせて頂きました。最初の数ヶ月は毎日胃が痛くて痛くて…。あげく病院に行くことになりました(笑)
最後に
料理人の仕事は本当に大変です!毎日バタバタとしているし、休みは少ないし、給料も安い。
一方で、やりがいは半端じゃないくらい凄いです。自分の技術が磨かれていく感覚を実感するのは本当に楽しいです。「料理人」というテレビゲームをやっている気分になれます。
料理人になって7年たちました。それでも、僕自身まだまだ修行中だと思ってます。そして、おそらく料理人を辞めるときまで修行だと感じていることでしょう。
もっともっと上の料理を見たい。料理を追求したい。そう思って日々頑張っています。辛くて大変な修行の先には、あなたにしか出来ない料理があります。人生の時間を使って没頭できる仕事を出来るって素晴らしいことだと思います。
これから料理の世界を目指すみなさん、一緒に頑張りましょう!