はじめまして、パン屋でアルバイトしているmidoriと申します。パン作りに興味を持ったきっかけは「オーブンレンジでお手軽に作れること」を知ったことでした。
といってもオーブンを購入したのは5年前。パン目的で購入したわけではありません。そのオーブンに不具合が出て、説明書を見ところ、レシピ集にパンが掲載されていました。
「え?このオーブンでパンも作れるの?」
そんなの当たり前じゃん、と思われる方もいるかもしれませんが、当時の私にとっては驚きです。仕事から離れており専業主婦、時間を持て余していたこともありパン作りに挑戦します。
オーブンレンジをどうにか復活させ、パン作りに必要なインスタントドライイーストをスーパーで購入。ここからパン作りの世界にのめり込んでいきます。
最初に作ったのがイタリアを代表するパン「チャバッタ」です。水分多めにすることで、モチっとした食感を味わうことはできました。
次にチャレンジしたのがフランスパン。皮がパリッとして、中がモチっとするフランスパンが私の好み。ですが、そう上手くは作れません。
家庭用オーブンレンジには下火機能がありません、上火の設定を250℃で焼き始めても5分後には210℃に下がることから、物足りなさを感じます。火力不足です。
5年間まともな仕事をしてこなかったオーブンがフル活動。この頃は「パン作りすぎじゃない?!」と夫から指摘されるほど、パン作りにのめり込んでいました。
- 作る>食べる、回数が多くなっていった
- 美味しくできたパンが消費しない
- 残っているパンがあると次が作れない
- たくさん作って練習したいのに消費しないと作れない
- パン屋では残ったパンをどうリメイクしているのだろう?
こんな感じで「パン屋」に興味がわいてきたのです。
前置きが長くなりましたが…。パン作りが好きな人は「パン屋アルバイトがオススメ」です。私が経験したこと、知ったこと、学んだことをまとめます。
趣味が高じてパン屋でアルバイト開始!
「今すぐ働きたい!パン屋で!明日にでも!」
良くも悪くも周りが見えなくなっていました(笑)
思い立ってからはすぐ行動!求人誌を見ると「大手パンメーカー」がアルバイトを募集しています。仕事内容は「スクラッチベーカリー」です。私の希望にまさしく合致。
スクラッチベーカリー
粉から生地を仕込み成型して焼き上げるまでの工程
「時給?いくらでもいい!」
「待遇?それもどうでもいい!」
一切確認せずに書いてある電話番号へと連絡。パンを勉強するのが第一目的です。パン教室に通ったつもりになれて、お金まで貰えるなんて最高です。また、パン製造現場を知ることによって、その業界が分かる気もしました。働く前からワクワクが止まりません。
待望の面接日がやってきました。駅ビルにテナントで入っているパン屋ですが、出勤希望時間によって、製造の仕事内容が決まります。
- 朝5時〜
- 朝7時〜
- 昼12時〜
この3種類があって分担業務は4種です。
パン屋での分担業務
- 窯 (朝5時)
- サンド(朝5時)
- スクラッチ(朝7時)
- 成型(朝12時)
4種類の業務が出勤時間によって振り分けられています。
1.「窯」
朝5時出勤の仕事。主にパンの焼き、揚げ物パンを担当します。
2.「サンド」
同じく朝5時出勤の仕事。当日店頭に出すサンドウィッチ作り、接客を担当。
3.「スクラッチ」
朝7時出勤の仕事。店頭に出すパンを粉から仕込み、成型する担当。
4.「成型」
昼12時出勤の仕事。明日店頭に出す菓子パンの成型、この作業を前日に担当
私は朝7時出勤を選択しました。理由は、全ての工程に携われる「スクラッチ」を希望し、さっそく任せられたのです。
初めての「生イースト」に感激!
出勤初日、パン屋では「生イースト」を使っていることに感激しました。パン作りを始めてから、本屋にあるパンに関する専門書を読みあさっていくと、必ずでてくる主材料が「生イースト」です。一般家庭で作る場合はドライイーストがほとんどのため、生イーストは見る機会がありません。
※左)生イースト 右)ドライイースト
見た目が長方形のブロックで、ツンとした匂い、手で簡単に崩せるのですが触り過ぎると粉々になる、1個1kgの重さの固形状でした。
私の担当として、1日4、5回は計量した材料を機械に入れてミキシングしますが、お店のベースとなるパン生地を作るときに使うのが生イーストでした。
「生もの」のため、冷蔵保存、保存が2週間しか持ちません。たくさん消費するパン屋でしか使い切れないのです。そのため、頻繁に使わない家庭には不向き。業務用スーパーで、“生イーストは注文後に取り寄せます”といった張り紙をよく見ます。
生イーストとドライイーストの違いは?
生イースト・・・菓子パンのような砂糖を多く使う生地に使用すると発酵が早くなるため、パン屋での製造過程では重宝します。保存期間はわずか2週間ですが大量製造するパン屋では問題になりません。
ドライイースト・・・開封後に密封冷蔵で半年も保存できます。その分だけ発酵が遅くなります。家庭ではインスタントドライイーストが扱いやすいでしょう。
パン生地の肝となる「ベーカーズ・パーセント」
パンレシピの多くは、全ての材料が「g(グラム)」で表示されています。「粉」を中心に考えて、その他材料が「粉に対して何パーセント入れるか?」が決まっています。
この配分率を「ベーカーズ・パーセント」といいます。
ベーカーズ・パーセント(%)=知りたい材料の分量÷粉の分量×100
例えば、基本の丸パン、粉を250gとした場合
小麦粉(250÷250×100=)100%
塩(5÷250×100=) 2%
砂糖(8÷250×100=)3.2%
無塩バター(15÷250×100=) 6%
水(160÷250×100=) 64%
ドライイースト(5÷250×100=) 2%
普段から料理・調理をすると、計量カップや大さじ・小さじスプーンを使うのが習慣になりますが、パン作りをするときはデジタルスケールをオススメします。大さじ1(15ml)は小さじ1(5ml)のちょうど3倍ですが、デジタルスケールで計量しないと、どうしても目分量となるため誤差が生じます。
材料 | 小さじ1(5ml) | 大さじ1(15ml) |
塩 | 5g | 16g |
ドライイースト | 3g | 9g |
無塩バター | 4g | 13g |
上白糖 | 3g | 9g |
グラニュー糖 | 4g | 13g |
パン生地は繊細なため、目分量では全然違ったものとなります。働いて分かりましたが、プロは生地への思い入れが半端ではありません。自宅で作る際もそれくらい神経質になって分量計測がオススメです。
パン屋の仕事!1日の流れ
- 窯…パンを焼く、揚げ物パン
- サンド…サンドウィッチ作り、接客
- スクラッチ・・・粉から生地つくり
- 成型・・・翌日のパンを成型
先にも書きましたが、この4種類の作業をそれぞれが担当、パン屋の1日が過ぎていきます。
朝一番で出勤する人は「窯」担当。開店に合わせて、焼きたてのパンを店頭に並べることができる役まわりです。前日の成型担当が形を作ってくれています。菓子パンや冷凍生地(ピザ用・ドーナツ用)の発酵具合を見極めつつ、入口4段×天板6枚ずつが入る業務用オーブンに、効率よくテキパキと天板を入れていきます。
「窯」担当は、いわばパン屋の花形でしょう。
その後、当日「スクラッチ」担当が成型して発酵させた、定番商品である食パン類やフランスパン類、あんパン、チーズパン、数々のパンが発酵した順に焼かれ、次々と店頭に焼きたてパンが並びます。店頭に種類がそろうのは11時頃です。
パン屋豆知識
パン屋に勤めたからこそ分かった「豆知識」です。
美味しく焼き上がるサイン「天使の拍手」
朝に開店するパン屋で、1日の品数が一番並ぶ時間は、お昼前となります。その時間帯に登場するのが「フランスパン」です。個人的に一番好きなパンです。
このフランスパンが美味しく焼きあがると「パチパチ」といった音がします。この音は“天使の拍手”と呼ばれています。
このパチパチ音が聞こえると、フランスパンがコロコロした形状で上手く出来上がったサインです。業務用オーブン、かつ製造担当のチームワークで成せるクオリティー高い商品です。家庭で、一人では作り出せないパン。それがフランスパンです。
リメイクは「ラスク」がオススメ!
私が働き始めた理由が「パンのリメイクを知りたい」でした。たくさん作ったパンを違う形に変えて保存がきくようにです。
パン屋でのリメイク、定番は「ラスク」です。
フランスパンを1cm幅にスライスしてラスクバターを塗り、窯でこんがり焼くと、ラスクの完成です。ラスクバターの作りやすい分量は、無塩バター200gに対して砂糖(あればていさい糖、なければグラニュー糖)100gです。ボウルを使い、ポマード状になるまですり混ぜます。残ったラスクバターは、密封冷蔵すると2~3日は保存可能です。
次に「ノアレザンの厚切りラスク」
レーズンパン(ゴマ入り)を厚さ3cmにスライスして、同じラスクバターを裏表に塗って焼くことができます。また、食パン(フランスパンも可)のリメイクの定番は、フレンチトーストでしょう。
最後に
学んだこと、経験していることはまだまだたくさんあります。それだけこの仕事が楽しく、趣味の延長線になっています。実はパン屋アルバイトには、パン作りが好きな人が多く、珍しいことではありません。共通趣味のため仲良くなれますし、言うことありません。
また、パン屋で働く人には「うつ病になる人」がいないと聞きます。パンが焼き上がった時の香りに、アロマテラピーのような効果があるそうです。働きながら癒やしを得ることが出来ます。
パン作りが好きな方、パン屋でアルバイトしてみるのはいかが?