航海士の仕事が過酷すぎて3年で辞めた!船乗りを辞めたいと思っている方へ伝えたいこと

激務でした

早速ですが、航海士という仕事が過酷すぎて辞めました!

・会社の無理な指示

・不規則な睡眠時間

・ピリピリとした人間関係

・船という閉鎖空間に耐えられないため

辞めた理由4つです。学校にも行ったのにもったいない、という声もありましたが後悔していません。現在は船や海と全く関係ない仕事をしています。

 

「辞めたいけど陸で仕事が出来るか不安」といった方へ向けて。私が経験した状況と辞めた体験談を記事に致します。

 

航海士とは?

航海士の仕事

防波堤や港から海を見れば、たくさんの船が走っているのが見えるでしょう。しかし、その船が何を運んで、どんな人が乗っているのか知っている人はほとんどいません。一見すると船はかっこいい存在ですが、閉鎖的な存在でもあります。

 

私は航海士として3年間勤務していました。船をよく知らない人には馴染みのない職業。「漁師さんですか?」とよく聞かれていました。私が乗っていたのは漁船ではなく貨物船です。

 

私は同じ船に二等航海士として乗っていました。乗っていた船種は499トンのコンテナ船。乗組員は5人でした。初めて乗船した時のことは今でも記憶に残っています。毎日仕事のことで船長や一等航海士に怒鳴られながら掃除、食事の準備と大変でした。

二等航海士

一等航海士(船長)の補佐をする存在。分かりやすく言うと副船長のような存在。

二等航海士として働いていた時のタイムテーブル

0:00〜4:00  ワッチ

4:00〜5:00  朝昼作り(5人分)

6:00〜11:00  睡眠

12:00〜16:00  ワッチ

16:00〜20:00  夕食作り、掃除

20:00〜23:00  仮眠

ワッチ

他の船がいないか監視する役目、一等航海士(船長)と三等航海士(新人)が教育も兼ねて日中や夜を担当する。二等航海士は教育をする必要がない分、夜中のつらい時間を任されることが一般的です。

 

睡眠時間は合計8時間ありますが、2回に分けて取るため寝た気はしません。職場で仮眠を経験した人なら分かりますが、家で布団で寝るのとは全然違います。とにかく疲れはとれません。陸について、荷降ろし等の業務が入るときは寝ているわけにいきません。

 

  • 「もっとたくさん寝たい…」
  • 「家で布団で寝たい…」

夜中のワッチ中に何度思ったのか数え切れません。

 

しかし、つらいことばかりではありません。同僚とは常に一緒なので、時には一緒にお酒を飲んだり、先輩船員にパチンコや遊びを教えてもらったり、昔やった失敗談を面白おかしく話してくれたり人間関係は本当に良かったです。

 

会社が赤字転落、船乗りの負担が増える

船乗りの負担が増えた

大変ながらも海上生活に慣れてきた1年半、少しずつ環境が変わってきました。会社が赤字に転落したのです。そのため、少しでも荷物を積もうと無理な航海指示を出し始めます。それまでは船が夜中に港に着けば、船員の体調面や安全面を考慮し翌日に回していました。それが、夜中だろうとなんだろうと水切りや積み荷も構わず行うような仕組みになります。

 

仮バースの回数も減り、私の睡眠時間はどんどん削られていくことになっていったのです。コンテナの荷役は1回に1〜2時間。長くても半日かかることはまずありません。ワッチがくればそのまま監視の時間でした。そしてその後に食事作りと掃除です。

仮バース

荷物を載せていない船が止まる桟橋(バース)を借りて陸につけること。着けていられる時間は決まっていますが、その間は荷降ろしがなく自由な時間になります。買い物に行くことも出来ます。

 

睡眠時間は

8時間➝6時間➝5時間…

日を追うごとに少なくなっていきます。

 

「いつか過労で死んでしまう…」

そう思うようになっていきます。

つらい毎日ですが船に乗っている以上は降りることが出来ません。

 

激務により航海士を辞めたAさん

激務で航海士を辞めた

最初に脱落したのは二等機関士のAさんでした。「この会社おかしいよ…」が最後の言葉となり船を降りていきました。これでは航海が出来ないので、会社は他の機関士を送ってきます。

 

この機関士は「要注意人物」と噂になっていた人です。とにかく仕事をしません。船長から指示が出ても、時間が来ても動かないのです。そのため、2人でやるべき仕事を私1人でやるしかありません。疲れは倍以上で常に働いている感覚に襲われます。まるで自分がゾンビかのように。

 

船に乗る=人間関係で休み無し

航海士の人間関係は大変

要注意人物は船長から怒鳴られてはいましたが、ちゃんとは改善しません。人間すぐに変わるものではありませんので…。

 

船の雰囲気も悪くなっていき小言や嫌味、喧嘩も増え、それまで仲が良かった同士でも互いに干渉しないようになりました。

 

どの職場にも人間関係がおかしいところは存在すると思いますが、自宅に帰ればリセットできます。しかし、航海士の場合は24時間同じ場所で過ごします。夜になれば開放されるわけではありません。同じ生活を共にする以上、仕事への取り組みにずれがあれば大きな問題になるのです。

 

そんな状況が2ヶ月続き…

頭が常にボッーとする症状が出始めます。

 

ワッチの時間というのは基本的に船が衝突の危険がないか監視する時間。その時間に気がつくと何十分と時間が過ぎていることがありました。起きているのか、眠っているのか分かりませんが意識が飛びそうな感覚です。

 

船乗りなら分かりますがワッチ中の居眠りは絶対にありえない行為です。船が衝突したら損害は何億と出ますし、大きな事故につながることもあります。

 

でも無理だったんです。

もう自分をどうにもできない状態。

 

味覚障害が発生!うつの初期症状に

味覚障害が発生

「おかしい…味が感じない…」

 

私の味覚がおかしくなります。本当に何も感じないのです。当時は分かりませんでしたが、味を感じなくなる味覚障害はうつの初期症状だそうです。それだけ追い込まれていたのでしょう。

 

船の料理を担当していた自分には致命的です。

  • 「ゴミみてぇだな」
  • 「しょっぱすぎる」

と苦情を言われることが増えます。でもどうしようもないんです、味がわからないんだから。

 

航海士を続けていたら躁鬱病を発症していた

躁うつ病を発症していた

  • 「なにがあったの!?」
  • 「ほんとうに○○!?(私の名前)」

両親に言われたセリフです。

 

3ヶ月の乗船期間が過ぎ、実家に1ヶ月間帰ることに。言われたのがそのセリフ。3年航海士を続けて初めて言われました。それだけ、会社の赤字転落による業務変更、人間関係の悪化によるダメージが大きかったのでしょう。ストレスから体重が激減、頬がコケ、人相が変わり果てていました。強制的に病院へ連れて行かれ躁鬱と診断されました。

 

うつ病は早い段階で治療が必要ですが、船乗りはそれが出来ません。家族には「もっと早く来ていれば」と医者が言っていたそうです。

 

航海士を辞める迷い、そして決心

航海士を辞める迷い

家に帰っても熟睡なんてことはできず、夜中にうなされる日々が続きました。夢の中でも船のことが頭から離れないのです。何日もそうした日々が続きます。両親からは「別の仕事をしなさい」の一言。転職への第一歩でした。

 

とはいえ、すぐには決心がつきません。船というのは特殊な世界です。その世界でしか通用しない技術がたくさんあり、私が経験した3年間は他業界では通用しません。まともに仕事に就けるか不安でしょうがありません。

 

そんな迷いを悟ったかのごとく、退職した元二等機関士のAさんから食事のお誘いを受けました。乗船期間が終わったのを図って誘ってくれたのでしょう。Aさんはそのまま船員を辞め違う職種についていました。

 

航海士を辞めたAさんから言われたこと

  • あのときの船は状況はおかしいから続けるべきでない
  • 船だけが全てではないし今は楽しいよ
  • また乗りたくなったら船乗りに戻ればいいし

 

船に乗ることが全て、他の仕事はできない、と思っていた私にこの言葉がすごく効きました。これで辞める決心がつきます。会社には退職すること、次の乗船はしないことを告げました。赤字転落していたこともあり、引き止められることもなく私の船乗り生活は終わりを迎えます。

 

船乗りを辞めてよかった!

航海士を辞めて良かった

結論から言うと、現在は船を降りて別の仕事をしています。閉鎖的な船という空間から開放されました。プライベートがある、家の布団で寝れるという当たり前のことが何より嬉しいのです。

 

  • 陸に上がっても仕事がないのでは?と不安がある
  • せっかく学校にまで行ったのに…と迷いがある

私も同じでした。しかし、辞めてから3年、一度も後悔したことがありません。よほどのことがない限り船に戻ることはありません。

 

あなたも今の生活に不満があるなら、行動してみてはいかがでしょうか?病気になった私が出来ているのです。これ以上の説得力はありません。この記事が「船乗りを辞めたい」と思っている方の参考になると嬉しいです。

 

航海士を辞めた後は?

航海士を辞めた後どうする

私の場合はうつ病があったので、辞めてからしばらく休息。復帰後まずは工場のアルバイトから始めました。船とは違うマナーや人間関係にに戸惑うことばかりでしたが、すぐに慣れることが出来ました。

 

倉庫業は船乗りが辞めた後に向いている仕事だと分かりました。ですので、仕事が無いと不安に思う必要はありません。むしろ優遇されるケースが多々あることを感じています。

 

仕事があるか不安…と思ったら、ぜひ転職サイトで「倉庫」「物流」と検索してみてください。グーグルやヤフーでなく転職サイトで行うのが重要です。たくさん募集していることが分かると思います。それだけ、物流業界はたくさんの人手を求めています。

 

 

 

船を運転するだけが船乗りの仕事ではありません。物流のプロでもあります。一般職から転職する人より有利だと(私は)思っています。

 

たくさん転職サイトがありますが、おすすめを1つだけ教えてほしいと言われたら、自分なら「リクナビNEXT」をおすすめします。最大手リクルートが運営しているので安心感があります。

 

正社員で転職する時に、自分もこのリクナビNEXTを使って転職活動をしました。転職サイトはたくさんありますが断然おすすめです。無料なのもGOODです。

 

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航海士をいつか辞めるとしても、行動は今のうちに

転職活動は早めに行動

この記事を読んでくれた方は、少なからず今の仕事に不満があるのだと思います。でも、転職活動しているのがバレたら怖いし。今すぐというわけでないので面倒。そんな方におすすめするのが、とりあえず転職サイトに登録だけしておくという事です。

 

これには大切な理由があって、それは初めの一歩を踏み出すのが一番大変だからです。船乗りの激務で精神が疲れてしまえば、いざ逃げ出したくなる時に行動すること自体が面倒になります。

 

「また乗船日か…」となってしまえばおしまいです。でも、初めの一歩を今踏み出しておけば、いざという時の逃げ道になります。

 

余裕がある時にこそ…

  • 「どんな求人があるのかな?」
  • 「どんな条件で働けるのかな?」
  • 「自分に合う仕事はあるかな?」

 

と調べることが出来ます。この機会に登録だけでもしておきましょう。

 

 

最後に

 

倉庫バイトは1年半も続けることが出来ました。病気もかなり改善され自分がどんどん前向きになっていくのが分かりました。その間にいくつか資格を取り転職も出来ました。

 

生活サイクルや人間関係などストレスになることがありません。陸に上がって良かったと心の底から思います。船の仕事は特殊で陸とは違います。それが出来ないと思っていませんか?決して難しいことではありません。

 

もし、そう思っているなら思い切って一度船を下りてみてはいかがでしょうか。そこには、たくさんの仕事が存在しています。私のようにリハビリのつもりで、アルバイトから始めても良いでしょう。また、航海士という激務を体験しているので、工場などの物流業は正社員として雇用してくれるところもたくさんあります。

 

「もし合わなかったら?」その時はまた船に戻れば良いだけです。そう考えられるようになったのは、陸に上がってたくさんの経験をしたからこそ言えることです。