健康になりたい、体質改善したい、病気しないように事前ケアをしたい。そういう時に役立つのが「漢方」です。漢方は、病院で処方してもらうか、ドラックストアで購入することができます。ただし、どちらにも漢方の専門家はいません。
Q.漢方の専門家はどこで働いているのか?
A.漢方薬局です。
薬剤師がその人に合った漢方薬を選んでくれます。私は選ぶ側として、漢方薬局で約10年、薬剤師として働いてきました。
- 漢方薬剤師の仕事内容は?
- やりがいは何?
- 給料はどうなのか
- 残業は多いのか?
勤めて分かった「漢方薬局で働くのはどうなの?」について記事を書いていきます。薬剤師として働き方に迷っている方、漢方薬に興味のある方に参考にしていただければと思います。
なぜ漢方薬剤師を選んだのか?
私がこの仕事を選んだ理由は2つあります。
1つ目は、漢方薬に興味があったこと。母親の勧めで小さい頃から漢方薬を飲んでいました。私にとっては身近なもの、この漢方薬についてもっと知りたい気持ちがありました。ですが、薬学部では漢方薬の項目がほとんど無く、それなら働いて知ろうという気持ちになりました。
2つ目は、就職活動中に「ふつうの薬剤師」の仕事内容に疑問を抱いたことです。アメリカでは、患者の病名を診断するところまでが医師の仕事で、薬を選んで投与する計画を立てるのが薬剤師の仕事です。ですが、日本では、医師が薬を選び、その薬を正確に調剤することが薬剤師の仕事でした。
「薬のスペシャリストである薬剤師なのに…。なぜ薬を選ぶ権利がないの?」と疑問や不満を抱きました。漢方薬局では、漢方薬剤師が自ら薬を選び、処方します。自分で選ぶには勉強は欠かせず、向上していくには良い環境だと感じました。
どうやって漢方薬剤師になったのか?
漢方薬局で働くためには、薬剤師もしくは、登録販売者以外の資格はいりません。漢方の知識も一切必要ありません。
漢方のスクールや中医大学などもありますが、身につけるのは入社してからで遅くありません。現に多くの社員は、入社後に働きながら勉強するのが基本となっています。
漢方薬局(漢方薬剤師)の仕事内容は?
漢方薬局によって仕事内容は変わると思いますが、私がやっていた仕事一覧です。
漢方薬局の仕事
- 店舗準備(掃除)
- 漢方相談
- 相談以外のお客様の接客(主に健康食品)
- アフターフォロー電話
- カルテの入力
- 薬の作り置き
- 注文品(薬を含む)の発送
- 商品の発注や検品
- フェアイベントの準備(健康食品のセール)
- 月間分析(売上・疾患・リピート率など)
- ポスティングやハンドアウト
メインの仕事は漢方相談、それに伴う薬の調剤です。それ以外にも細々と仕事があります。私が働いていた漢方薬局では、漢方薬を飲んでいる方へのアフターフォローの電話をしていました。また、私が働いていた漢方薬局は担当制のため、お客様に来店予約の電話をかけることも多々ありました。
「営業みたいなことをやるんだ…」と始めはビックリしましたが、よくよく考えたら保険調剤薬局のように処方箋患者様が自主的に来るわけではありません。
実費でも「漢方が欲しい」というお客様を維持しないと経営が成り立たないのです。そのため、個人や店舗の売り上げの実績など、営業マンに近い仕事もしているのが現状です。
漢方薬剤師の給料はどう?
漢方薬剤師の給与
- 月給 30万
- 賞与 2〜3ヶ月分
年収 420万
漢方薬局の平均給与は約300万ぐらいで、通常の薬剤師業界では少ないほうです。私は店長や管理職経験、個人売上の貢献があったため、平均より良い給与となっていました。
これは、私の勤めていた漢方薬局だけではなく、どこの漢方薬局もこのぐらいです。長く続ければ給与が上がるというわけではなく、管理職や店長経験、個人売上の実績が良くないと、昇給はあまり期待できません。
給与だけを考えれば調剤薬剤師の方が優れていますし、安定していると思います。「漢方を扱いたい」「営業能力をつけたい」という事情がなければ、続けられないというのが本音かと思います。私自身はやりたい仕事にマッチしていたこともあり、給与面で不満に思うことはありませんでした。
漢方薬剤師の残業は?労働時間は長い?
店舗によって違いますが残業は月10時間程度です。一般企業と比較して少ないと思います。約10年間のうちに地方・都内合わせて4店舗経験しましたが、東京の店舗は地方店より残業が多いように感じます。
残業になることが多い状況としては2つあります。1つはお客様の退店が遅くて、店舗を閉めれない時です。相談が長引いいたり、ぎりぎりに駆け込んでくると、店を閉めるわけには行かないため、その分は残業になります。もう1つは、カルテの入力などの雑務が終わらなかった時です。どちらも頻度は多くはないですし、長くても30~1時間程度の残業で済むことが多いです。
休日はどう?
月10~11日もらっていました。祝日含む土日の日数を月に振り分けているので、平日週5勤務の会社員よりは多く休めるのでラッキーな気がします。
その代わり、土日休みはほぼありません。土日はお客様が多いので稼ぎ時になります。祝日や連休もお客様からの予約が入りやすいため、売上成績の良いスタッフは必然的に平日休みが多くなります。もちろん、希望を出せば土日も休めます。また、管理職にならない限りは休日出勤もありません。休日出勤した場合は、基本振替休日を貰えますが、半日ずつになる場合もあります。
子育てとの両立は?
子育てとの両立は難しいのが現状です。店舗にもよりますが、営業時間が都内は11時~20時、場合によってはシフト制で10時~21時、地方店でも10時~19時となります。時短で働いている方もいらっしゃいますが、年々減っているのが現状です。
理由としては、〈会社が働いてほしい時間帯〉〈ママさんが働きたい時間帯〉が合わない事だと思います。お子さんのお迎えは遅くても18時ですよね。会社帰りでいらっしゃるお客様が多いため一番忙しい時間帯となります。同様に、お子さんの行事は土日に多いと思いますが、先にも書いたように土日が稼ぎ時です。
そのため、妊娠をきっかけに退職者が多くでます。それが漢方薬剤師の現状です。
漢方薬剤師のやりがいは?
「調剤薬局の方が待遇も良いし、子育てもしやすい」と待遇面だけを見ればそう感じるかと思いますが、漢方薬剤師にはそこでしか味わえない”やりがい”が存在します。
私が10年間で感じた「漢方薬剤師のやりがい」を紹介いたします。
やりがい1.自分自身で薬を選択できる!感謝される仕事
調剤薬局の場合は、医師が処方した通りに薬を作り、それをお渡しする。特別にお客様から感謝をされる機会はなかなか無い仕事だと思います。先にも書きましたが、漢方薬剤師はお客様にあった薬を自分の意思で選ぶ必要があります。担当制となればさらにお客様との関係が密になります。
例えば、妊娠希望だが病院では特に異常もなく、治療するほどではないといわれたお客様。漢方薬を服用して、妊娠することができました。さらに、産後のケアとして、赤ちゃん連れで相談してくれました。
また、お客様からの感謝の言葉や手紙をもらうことも多いです。
- 「諦めていたのによくなったのはあなたのおかげです」
- 「引きこもっていたけど、大学受験できるようになりました」
- 「すごく頼りになります。母にも勧めたいので紹介してもいいですか?」
感謝の言葉、感謝の手紙。見返りを求めて働いているわけではありませんが、すごく嬉しい気持ちになるのは間違いありません。「やってよかったな」と思う瞬間です。
やりがい2.自分で薬を自由に選べる楽しさ
上記と似ていますが、薬を自分で選べる楽しさがあります。薬を選べるようになるためには、それ相応の勉強や時間がかかります。一人で処方を選べるようになるには、約3年必要とされています。その間は、先輩方が教えてくれますので安心して経験を積めます。
1人で本格的に選べるようになると、楽しさも倍増!お客様が改善するお手伝いが出来たときの充実感は何事にも代えがたいです。
やりがい3.食材についても学べます!
実は、「漢方」と「漢方薬」は厳密にいうと違います。
その中の一つに薬があり、この方法を「漢方薬」と言います。漢方は他にもあって、「食養生」があります。簡単に言うと、体質に合った食材を食べようという事です。そもそも、漢方薬の原料(生薬)は、木の根や葉、実や種です。もともと食べ物だったものが薬の原料になっていることが多いのです。
例えば、ミントは「薄荷葉」という名前で加味逍遙散という漢方薬に配合されています。ですので、加味逍遙散を飲んでいる方は、ミントなどの香りの強い食材を取ることをアドバイスしたりします。ほかにも、むくみやすい方には豆類やトウモロコシのひげを、貧血気味の方には、ドライフルーツやなつめを取るようアドバイスします。
こんな風に、漢方薬だけでなく、食材に強くなれるのも漢方薬剤師の魅力の一つだと思います。
最後に
漢方薬局について記事をまとめました。薬剤師といえば、病院側の調剤薬局、ドラックストアでの仕事イメージが強いと思います。そんな中でも「漢方薬剤師」という仕事が存在し、誰かの役に立つ仕事があります。
漢方に興味がある薬剤師の方へ。私の経験談、この記事が参考になることを願っています。

薬剤師になって11年経ちました!漢方薬局で10年勤務した後に、心機一転お薬のコールセンターへ転職しました。現役薬剤師です♪