「介護」
現代社会において人手不足と言われている職種です。
実際にどの施設もスタッフの数は足りていないと思います。その分だけ一人の仕事量は多く、身体の負担があります。
仕事が嫌になって、つらくなってと辞めていく介護職員はたくさんいます。しかし、私は職場でのいじめが原因で介護職を辞めました。
これまでに私の経験してきた出来事をお話させていただきます。
特養へ就職も…さっそくの新人いじめ
私は高校卒業後、新入社員で特別養護老人ホームへ就職しました。もちろん資格も経験もまったくない状態ですが、やりたかった仕事だったこともあり、やる気に満ち溢れていました。
高校卒業したての社員ということで、理事長、施設長、入居者様には大変可愛がってもらったと思います。
仕事に慣れてきた頃、同じ階のフロア内で移動があり、私は反対側にあるフロアに移動しました。そのフロアのスタッフは冷たい態度の方が多く、入居者様も我の強い方がたくさんいる大変なフロアでした。
ある日、興奮していた認知症利用者の対応を上手くできないことがありました。
それをきっかけに色々とほころびが出始めます。以前とは違う雰囲気に戸惑い、なかなか成果をなかなか出すことが出来ませんでした。直属の上司に睨まれる、ネチネチ注意されたり、些細なことで怒られることが増えていきます。
中でもひどかったのが看護師です。「邪魔」「仕事おっそ」とぼそっと言われる始末です。次第に私に話しかけてくるスタッフが一人、二人といなくなっていきます。
そして、私自身の内気な性格もありついには職場で孤立してしまいました。お昼を食べるときもたった一人です。
3ヶ月経った頃には夜勤がスタートしました。本来は看護師の仕事が回ってきたり、徘徊の利用者を一人で対応しなければいけない時もありました。
しかし、それでも私にとっては気が楽でした。一般的には夜勤は嫌われるシフトなのですが、私にとっては居心地が良かったと言えます。夜間は利用者が寝ており、スタッフも少ないので自分のペースで仕事ができたというのがあると思います。
孤立していることで仕事に影響が出始める
一方、多くのスタッフが関係する日勤シフトはより厳しい状況となっていきました。
入浴担当になった際は、二人組でしなければいけない作業なのに誰も来てくれなくなりました。別フロアの上司がサポートで入浴させるといった事態に。
準備、後片付け、洗濯も全部一人でやらなければいけません。とはいえまだ新人です。分からないことを聞きに行っても無視される、睨まれながら「はぁ?」っと言われたことも何度もあります。
次第に人の目が怖くなっていきます。笑うこと、目を見て話すことが出来なくなりました。
それは食欲にダイレクトに影響を与えます。朝、昼は何も食べたくなくコーヒーで済ませる。家に帰っても夕食を食べれない。ただお風呂に入って寝るだけの生活。
当時は食べ物を口にするのは2日に1食だけ、といったひどい状況です。
親元を離れていたこともあり両親はよく電話をかけてくれました。しかし、心配はかけたくなかったので「毎日楽しい」「頑張る」と嘘を言っていました。
母の「頑張れ」の言葉が苦痛でしかなかったのを思い出します。
入社半年、精神的に限界を迎えてしまった
入社して半年、体調を崩し初めて早退をしました。
その日を堺に私のぎりぎりとどまっていた何かが、音もなく崩れていきました。仕事に行きたくない、とストレートに思ったのです。
そして、そのマイナスな思いはそれだけに留まりません。
死にたい、消えたい、辛い、助けて、頑張れない。
この心の声が常に頭の中でリピートされます。本当に本当に死のうかとさえ考えてもいました。そんな私の異変に気づき、救いの手を差し伸べてくれたのが遠距離恋愛していた彼氏でした。
私の家まで迎えにきて実家まで私を届けてくれました。突然の帰宅に驚く両親に泣きながら今までの出来事を話をしました。両親も涙を流しながら話を聞いてくれ「気づかなくてごめんね」の一言。施設を辞める、という選択肢をくれました。
退職、そして心のオフ期間
これが私が入社して1年以内の出来事です。
もしあの時、彼が手を差し伸べてくれなかったら?両親に事実伝えることはできなかったでしょう。下手したら最悪の選択をしていたかもしれません。
退職後は一時療養として実家暮らしに戻りました。私が追った精神的ダメージは大きく、半年間まともに外出できませんでした。意を決して買い物に出掛ける時でさえ、下を向いて歩くのが精一杯でした。人を見るのが怖いとすら思っていたのです。
しかし、時間というものは傷を解決してくれるのですね。1年も経つ頃には以前と変わらない状態に戻っていました。食欲も笑顔も戻り、次第に精神的にも安定した頃、先ほどの彼と結婚しました。
考えなければいけないのは今度どうしていくか?です。
- 違う職種にするのか?
- 再び介護をやるか?
- 専業主婦をやるのか?
主人と何度も話し合いました。その結果、やっぱり仕事するなら介護がいいと思えたのです。一度つらい思いをしたにも関わらず、それを選んだ自分自身にさえ驚きました。
そして、また高齢者の方と関わりたいと思えた自分が嬉しく思いました。
グループホームへ就職決定!
私が選んだのは新しくオープンするグループホームでした。
面接では「なぜ前職場を辞めたのか?」と当然ですが聞かれました。私にとっては思い出したくない日々でしたが、新しい自分になるためにも負けてはいけません。すべて真実を伝え面接は終わりました。
結果は採用、でした。
もしかしたらダメかもと思っていましたが、すごく安堵したのを思い出します。
後日の施設見学では、施設責任者の女性とその話になりました。前の職場であったことを話したところ、「一緒に頑張って良い施設にしましょう!」と言ってくれました。ここなら大丈夫そう、と温かい気持ちになれました。
オープンスタッフだったこともあり、就職したスタッフは同じラインからのスタートです。お互いにいろいろ情報交換しながら、一丸で進んでいく日々はとても充実していました。
利用者も私を孫の様に可愛がってくれました。「いつも元気だね」「ありがとう」と声を掛けてくれるのが本当に嬉しかったです。
本当に良い職場に出会えたと思います。今現在は子育ての為、そこは退職しましたが子供たちが成長し、働けるのであればもう一度、介護の仕事をやりたいと思っています。
最後に
もし、人間関係に悩み苦しんでいる人がいるのあれば伝えたいことがあります。
手遅れになる前にそこから逃げてください。心が病んでしまうとどんどん暗い闇の中に吸い込まれていきます。
一番自分を大切に思ってくれる人、自分を理解して真剣に向き合ってくれる人に話を聞いてもらってください。それは、もしかしたら自分の欲しい言葉ではないかもしれません。しかし、一人で悩んでいては絶対に解決しません。
無理をしないでください。手遅れになる前に「助けて」とSOSを言える勇気を持ってください。