昔からいるペットたち。最近はそのペットに関して話題性があり、テレビでワンちゃん、ネコちゃんを見ない日はありません。実際、街中のいたる場所に多種類の動物病院が立ち並んでいます。
そんな私も獣医師として動物病院で働いています。今年で6年目、まだまだ未熟で日々勉強の身ですが、一人前としてバリバリと仕事をこなしています。
この記事では…
- 獣医師の仕事?
- お給料や残業はどうなの?
- やりがいや大変なことは?
これらのことを私の経験から書かせて頂こうと思います。これから獣医師になりたいと考えてる方や動物関連のお仕事に就きたい方などの参考になれば幸いです。
なぜ獣医師を選んだか?
今は2匹の猫ちゃんが家族の一員です。それどころか生活の中心になっています。他者も認める無類の猫好きですが、反対にうちの家族は大の動物嫌い。小さい頃に犬猫と接する機会はありませんでした。
そんな中で育ったため、子供の頃は犬がとにかく苦手…。猫に関しては接する機会が全くありません。そのため、好きとか嫌いとか、特別な感情を持っていませんでした。
そんな私がなぜこの道を選んだか?それは「ある野良犬」を見たからでした。
たしか、幼稚園の頃だったと思います。家族で出かけた先で一匹の野良犬を見つけました。その子は、とてもボロボロで痩せています。首輪が食い込んでいて、それは子供ながらにとても鮮明かつ激しいショックを受けたのを覚えています。
そして、それを誰も助けようとしていない光景にショックを受けます。「なんで誰もあの子を助けてあげないの!」と泣きながら怒ったことも覚えています。困った両親は「動物を助ける職業があること」を教えてくれます。それは動物のお医者さん、という職業であること。
「私が助ければいいんだ」と思い、獣医師になることが夢となります。その気持は大人になっても変わりませんでした。
親が獣医師だった。動物が好きだった。これを理由に獣医師を目指している方が多いです。他には、ドラマや漫画の影響、医学部が受からなくて獣医師の道に進んだ、を理由にした方もいました。
獣医師になるためには?
獣医師になるためには、まず「獣医学部」のある大学に入学しなければなりません。一時期、加計学園で話題になっていますが、その新しい獣医学部を含めると17校しか日本にはありません。そして、この獣医学部に入るのが一番の困難かと思います。
※2018年8月時点
どこの獣医学部も偏差値が高く、そして国立は募集人数が少ないです。私立も100人前後しか枠がないため狭き門となっています。残念ながら、私は勉強が出来たわけではありません。ずっと模試で一番最悪のE判定を受けつづけ、先生にはずっと辞めるように説得されていました。
ですが、その諦めない熱意が伝わったのか?推薦を頂けることになります。点数は足りない、生活態度が良いわけでもない、あったのは「獣医師になる」という想いだけ。本当にまぐれのような幸運で獣医学部に入ることが出来ました。
そして、獣医学部に入ったあとは実習と勉強で6年間過ごします。大学を卒業(卒業見込み)すると、獣医師の国家試験を受験することが出来ます。当時とは少し獣医学部のカリキュラムが変わってしまったのでなんとも言えないですが、国家試験の合格率はどこの大学も高いです。
国家試験で不合格になるのは1学年で1人いるかいないかです。しっかり勉強をしていれば問題はありません。合格して国家資格を得ると、ようやく獣医師の仕事が待っています。
獣医師の仕事内容は?
獣医師の勤務先といえば、すぐに思い浮かぶのが犬や猫を診察する「ふつうの動物病院」だと思います。これは小動物臨床と呼ばれている分野になります。
当然ながら獣医師の仕事は、小動物臨床だけではありません。人間の病院が多種に分かれているのと同じように、獣医師もたくさんの分野が存在します。
獣医師の主な分野
- 小動物臨床
- 大動物:牛豚などの家畜、競走馬など
- 製薬会社
- 公務員
- 研究職
- 水族館、動物園
大きく分けられた中でもさらに細かく分かれていきます。
私は小動物臨床に在籍をしており犬、猫を見ています。その他には、爬虫類専門や猫専門の病院も数多くあります。最近は、専門性をもった獣医師が多くなってきています。例えば心臓の認定医、腫瘍の専門医、麻酔の専門医等、スペシャリストとしても活躍されています。
小動物臨床の仕事内容
- 診察:これがメインになります
- 手術:私は手術が苦手なのでしてませんが…
基本はこの2つが獣医師の仕事になります。その他にも雑務がいくつかあります。会計やお薬作り、掃除、洗濯、入院している犬猫のお世話など。時には問診したり、ほかの獣医師の保定に入ることもよくあります。
保定…動物が動かないようにおさえること
獣医師のお給料は?
「動物相手とはいえ医師なんだから給料高いでしょ?」とよく言われます。ですが、現実として獣医師の給料は高いと言えません。
初任給は月収23万でボーナスなし、福利厚生もなしでした。病院や経験年数で月収が変わってきますが、獣医師になりたての場合はどこも20~25万程度です。福利厚生が充実している勤務先も増えてきましたが、私のように全然無い職場がまだまだ多いです。就職する際はしっかり確認したほうがいいと思います。
院長クラス、経験を積まれた先生であれば、月収30万以上は貰えるため昇給は期待できます。また、夜間救急がある病院であれば夜勤手当がつくのでプラスとなります。動物病院は開業(独立)も出来るため、自分の病院を持つことも選択肢の1つとなります。
獣医師の残業は?
残業は約40時間ほどあります。
医療職のため「残業」という考えがあまりありません。夜に緊急オペが入ることもありますし、繁忙期である予防接種は予定通りには終わりません。さらには入院しているワンちゃんネコちゃんのお世話、それをしているうちに時間が過ぎる場合もあります。
「定時になったら帰ります!」という考えを持ってしまえば、命を預かる仕事は出来ません。そこは仕方ないと割り切る部分は多いです。
子育てとの両立は?
私はまだ子供はいませんが、結婚して子供がいても働くママさん獣医師はたくさんいます。さらには、開業されてる方も数多くいます。友人に聞いても、子育てに関しては理解のある職場ばかり。どの動物病院でも理解があるのは業界全体の風潮といえます。
子供が突然熱を出して欠勤になっても、小言をいうスタッフや先生は見たことはありません。抜けた分を残った人員でカバーしあっています。
獣医師で大変なことは?
あくまで私の考えですが、この職業は良いことや嬉しい出来事よりも、悲しい出来事のほうが多いです。命を扱う以上、自分の力が及ばないことがあり、精神的に落ち込んでしまうことが多いです。
自分でうまくその落としどころをつけないと、どんどん深みにはまって抜けられなくなってしまいます。精神を病んでしまった友人も数名いますし、獣医師自体を辞めた友人もいます。「情をうつさない」これが獣医師の鉄則です。ですが、そんなのは分かっていても出来ません。私は6年たっても感情移入癖が抜けません。飼い主さんと一緒に泣いたことは数え切れません。
さらに、この職業は接客業です。動物だけ見ていればいいわけではなく、飼い主との対人関係もストレスになることがあります。ほとんどの飼い主さんはペットを愛する素晴らしい方で、しっかりワンちゃん、ネコちゃんを大事にしてくれています。
そんな中にも非常識な飼い主さんは一定数います。閉店した病院に勝手に入ってくる、自分が特別だと思って優先で診察してもらおうとする方、ひどくなった状態でワンちゃん、ネコちゃんを連れてくる。そういう方に対応すると本当に虚しくなります。
すでに悪化した状態でつれてきて「どうにかしてください」というものの、お金は無いから諦めるといったことも。もちろんお金で無理させることは私たちの仕事ではないため、出来る範囲で治療をさせていただきます。ですが、悪いのが分かっていながらずっと放っておいただろう、という飼い主には怒りがこみあげてくることもあります。
獣医師になりたい方へメッセージ
この記事を見ると「獣医師」に対して、ネガティブな印象を持ったかもしれません。
ですが、獣医師になりたい。そう思うのであれば絶対に夢を叶えてください。動物を飼うことは誰でも出来ますが、動物を治療できるのは「獣医師」だけです。未来のあなたにしか出来ないのです。
ひどい飼い主に悲しい思いをさせられたこと、医療の力が及ばず亡くなってしまったワンちゃんネコちゃん、そのプレッシャーに負けて落ち込んだこと。思い出せば涙が出るエピソードは数知れません。ですが、私は獣医師になったことを後悔したことはありませんし、誇りを持って仕事をしています。それは何年も、何十年も変わることはないでyそう。
元気になって帰っていくワンちゃんネコちゃん、そして飼い主の笑顔。それを助けることが出来るのは獣医師だけ。あなたが目指すのはそんな誇らくて素晴らしい仕事です。