「乗馬クラブはどんな仕事なの?」
と分からない方が多いでしょう。
言葉通りに「乗馬」に関する仕事でして、お客様に乗馬を教えたり、馬の世話や調教をしたりすることが主な仕事内容です。「生きもの」と「お客様」を相手にするサービス業です。
結論から言うと、私はこの乗馬クラブを辞めて異業種へ転職をしました。
・毎日サービス残業の量が多かったこと
・過酷な労働環境で扱われる馬がかわいそうで見ていられなかった
全ての乗馬クラブが同じとは思えませんが、これから就職を考えている方。あるいは、乗馬クラブを辞めたいと考えている方へ体験談を記事にしていきます。
過酷な労働環境
入社前説明会で、会社のこと、仕事内容を説明してもらいました。その説明会では、残業が多いこと、拘束時間が長いことは一切触れられませんでした。
入社してすぐに現実が甘くないことを知ります。朝早くから夜遅くまで、ずっ〜と仕事。まともに食事を摂ることができない日もありました。「話が全然違う…」と思いながらも、せっかく入った会社だから我慢しなきゃと自分に言い聞かせていました。
しかし、共に働く馬たちはもっとひどい扱いを受けていました。
毎日朝から晩までレッスンに出てお客様を乗せる。ご飯もまともに食べることができていません。そんな姿を見ていて、さらに仕事が嫌になっていきました。
半年なんとか我慢しましたが…辞めようと決心。自分の中で「半年はなんとか、半年あれば変わるかもしれない」と暗示をかけてきましたが、限界がきたようです。労働環境は全く変わることはなく、改善しようという雰囲気もありませんでした。
ただ同じ毎日が過ぎていく。終わりのない戦いが怖くてしょうがありません。私は意を決して退職の相談をしましたが、強い口調でそれを拒否。本社でも面談しましたが退職はさせてもらえず。反対にパワハラの被害を受けるように。
業界の問題なのか、会社の問題なのかは分かりません。辞めたいのに、辞めさせてもらえない状況が1ヶ月続きました。それでもなんとかしなきゃ、という思いから労働基準局へ相談に行き、なんとか退職する運びとなりました。
毎日サービス残業&給料が激安
この仕事はとにかく朝が早いのです。毎日朝6時半には出社します。通勤もあるので、5時半には起きていないといけません。冬の時期はとにかくこたえる。仕事はつらいし、このまま2度寝したいと思ったことは1度や2度じゃありません。
朝が早いだけでも大変なのに、終わりの時間も遅いです。帰りが遅すぎて夕飯はいつも一人飯です。
20時退社 ラッキー!今日はめちゃくちゃ早く帰れた
21時退社 いつもより早く帰れた
22時退社 だいたいこの時間です
形だけの定時(8ー17時)はありました。強制早出になるのでその前に出社、タイムカードを押すことできません。まず馬の調教運動や世話、綺麗をやります。ようやく8時になるとタイムカードを押すことが許されます。
昼休憩はとれないことも多かったです。基本は早食い。
17時になるとタイムカードが打刻されます。私じゃない人が(笑)
例え、自分の仕事が終わっていても帰れません。「もう終わったの?もしかして帰るの?」という気まずい雰囲気を作られ、他の仕事を押し付けられる始末。これが22時帰りになる原因です。
残業代がつくことはありませんでした。
当時の給料は基本給で15万円ほど。
「激安すぎる…」
時給換算では455円。カオスな世界です。
とにもかくにも、ストレスがすさまじい日々。仕事終わりに暴食してしまい。肉体労働なのに入社してから5キロほど太っていました。そして、貯金は1円も作れない貧乏生活。実家じゃなかったら…無理でしたね。
過酷な環境下にあった馬たち
過酷だったのは私だけではありません。馬たちもです。
本来、草食動物である馬はとても大人しい生き物。きちんと調教を行えばとても従順な動物です。危険を感じると自分を守るために蹴ることや噛むことはあっても、攻撃しようとして行動をすることはありません。
しかし、毎日朝から晩までレッスンに使われ、ごはんもゆっくり食べることができないほど働かされていた馬たち。常にストレスフルな状態で、本来の馬がしないような行動を取ります。噛んだり、蹴ったり。
朝ごはんを食べきる前に午前中のレッスンに使われます。朝ごはんが残ったままです。昼ごはんはそこに足される。空腹状態で2食分を一気に食べる…という誤った食事が通常になっていました。中には一口、二口食べたらレッスンに出されてしまうこともありました。
大人しくて人懐っこかった馬たちも、どんどんストレスが溜まっていきます。ストレスが発散できず、人を威嚇したり、噛んだり、蹴ったり。本来ならば絶対しない行動をするようになっていました。
人間不信だったんだと思います。脚が痛くて運動ができない馬をレッスンに出したり、お腹を痛がっているのに治療もせず放置。心が痛くなり…先輩に相談しても休ませてはもらえず、無理やり働かされていました。
私の労働環境もひどくつらかったのですが、それよりも馬たちを見るのがよりつらくなっていきました。「どうにしかしたいけど、どうにもできない」と思っているだけの自分も、虐待をしているのではと自己嫌悪に陥ることも。
退職した今も、馬たちのことは気がかりです。なにか革新的なことが起こり、良い扱いを受けていることを願うばかりです。
馬は道具だ!が許せなかった
先に書いたとおり、入社半年で仕事を辞める決意をしました。
「なぜ辞めるんだ?」
「辞められるわけないだろう」
と話をまともに聞いてもらえません。
相談をした日から度々呼び出され、上司と二人で面談を行いました。何度面談したか分からないくらい、何回も何回も面談です。それでも話は聞いてもらえず、パワハラが加わっただけに。
- 「お前は迷惑をかけるためだけにここに来たんだな」
- 「馬は道具であって馬の命よりも利益が大事なのが分かっていない」
- 「能力がないのに何がしたいんだ」
- 「お前は必要ない、給料をもらいすぎなんだ」
と言っていることがめちゃくちゃ。
自分がバカにされることはまだ良かった。
ただ「馬は道具」は絶対に許せなかった。
「こいつだけは…許さない」
仕事をどんな手段を使っても辞める決心がつきます。
労働基準局へ相談
地域の労働基準局へ相談をしに行きました。そこでは会社名や現状などを詳しく聞かれ、細かく話しました。担当の方はとても親切に対応してくださりました。どうしたら良いか分からなかったので、本当に助かりました。
- 雇用者としてどんな権利があるのか
- どのような方法を取れば辞められるのか
- 次に面談で困ったらどのように対応したらよいか
を教えてもらい「ほっ」と心が軽くなった気がしました。
相談後は上司の様子が変わりました。
何か労働基準局から連絡があったのでしょう。
「辞めていいよ」とその一言が。
辞めるまでの1ヶ月はパワハラもありましたが、労働基準局からのアドバイスがあり何とか乗り切ることが出来ました。そして、馬たちにもお別れです。
「自分だけ逃げてずるいのかも…」
という気持ちはぬぐえません。でも自分もどうにかなりそうで限界。馬たちもどうにか改善されることを願ってお別れです。
最後に
「仕事を辞めたい」
「辞めたいけど辞めさせてもらえない」
そんな状況の方は多いと思います。つらいと思ったら逃げることも大事ですし、労働基準局へ相談に行くべきだと思います。一人で悩んでいるならなおさらです。
本題とは外れますが…
動物に関わる仕事をされる方。
動物は人間の利益のために存在はしていません。
「動物は道具」「利益の方が大事」という動物軽視発言。
もし社内の人間が発しているのであれば、その会社は終わっています。
いずれ大きな問題を起こすでしょう。
誰かを変えるのは無理、でも自分の環境を変えることは出来ます。
手遅れにならないうちに行動する。それだけです。