【30年目が教える】ぶっちゃけ放射線技師はどうなの?放射線技師の仕事内容、給料、残業、やりがいをまとめました!

医療関連

具合が悪くなったり、ケガをした時、お世話になるのが病院や診療所です。病院では制服を着た多くの職員が、慌ただしく行き交っていることでしょう。私はその中の一人、放射線技師として約30年にわたり地域の皆さんの健康に関わってきました。

 

一般的には、レントゲン技師とか放射線技師と言われることが多いですが、正式名称は「診療放射線技師」といいます。国家資格を有する医療専門職です。

 

  • 診療放射線技師はどんな仕事をするの?
  • 給料はどのくらい?
  • 放射線は危なくないの?

 

将来診療放射線技師として働いてみたい、という方に向けて。私の経験や知識が少しでも参考になれば嬉しいです。

 

診療放射線技師という職業との出会い

一般人にはほぼ馴染みのない職業。この仕事を選んだきっかけは偶然でした。母校の先輩が医師として働いていることを知り、病院に遊びに行ったことが始まりでした。

 

遊びに行ったはいいが、女性職員の多い病院でポツンと浮いてしまいました。そこで、気さくに声をかけてくれたのが放射線科の技師長さん。何度か遊びに行くうちにレントゲン室に出入りするようになり、体の中の病気を見つけ出すという「画像診断」の面白さに興味が湧きます。やがて、放射線の道に進もうと考えるようになりました。

 

診療放射線技師になるには?

必要な資格

診療放射線技師(国家資格)

 

診療放射線技師になるためには、厚生労働大臣指定の「診療放射線技師養成所」を卒業しなければいけません。卒業すると国家試験の受験資格を得ることが出来ます。試験を合格して初めて診療放射線技師になれるのです。

 

養成学校は全国に47校(現在)あります。夜間部を併設している学校も多くあり、昼間は病院の放射線科で助手として働く。夜は学校に通う方も多くいます。

 

診療放射線技師養成学校への入試科目は理数系問題が中心となります。医学部ほど難易度は高くありませんので、理数系に絞って集中して勉強すればそれほど狭き門という訳ではありません。ちなみに私は高校で文系の授業を選択していました。

 

診療放射線技師はどんな仕事なの?

医師の指示のもと、放射線を用いた検査や治療を行うのが仕事となります。放射線を照射を許されているのは医師と診療放射線技師だけとなります。

 

医師はたくさんの患者データをもとに診断や治療に当たっているため、放射線業務を行う時間がありません。実際に業務を行っているのは診療放射線技師だけとなります。独占的資格となります。

 

仕事内容


一般X線撮影検査

X線を使って胸や骨などの体内を撮影する検査

X線テレビ検査

バリウムなどを使って胃や腸をX線テレビで観察する検査

CT検査

X線を使って体内を観察する検査

MRI検査

磁石を使って体内を観察する検査

超音波検査

超音波を使って体内を観察する検査

 

一口に放射線といってもたくさんの種類がありますが、一般的には診断目的で使用するX線がほとんどです。大学病院などの大規模病院になると、X線以外の放射線を用いた仕事もあります。

 

診療放射線技師の給料はどう?

初任給をもらったのは約30年前となり、あまり参考にならないかもしれませんが…。私は中規模の民間病院に新卒入社で年収400万円でした。当時としては一般大卒初任給に比べて少し良い給料をもらっていたことを思い出します。

 

医療業界における診療放射線技師の給料は比較的高い部類に入ります。最も高額なのは医師となります。次いで薬剤師・診療放射線技師・臨床検査技師といったコメディカルスタッフ(医療スタッフ)になります。

 

給与形態は月給制ばかりでなく民間病院では年棒制の場合も多く、私も年棒制で給与をもらっています。これは施設によって、入職時の契約によってまちまちだとは思います。

 

放射線技師の残業は多いの?

現在の職場に移って残業はゼロ。ほぼ確実に定時に帰れます。以前勤めていた病院でも、あまり残業した記憶がありません。医師、看護師は残業が多いのですが、放射線技師は少ない職種なのかもしれません。

 

大規模病院では夜間の当直業務があるため、定時になると引継ぎを行い、日勤者は速やかに帰宅となるのがほとんどです。

 

一般病院では、外来診察時間が終了して、撮影予定患者を撮り終えたら残務整理をして業務終了です。病院としては、仕事が時間内に終わるよう診察時間を始めています。よほど患者さんが多くない限り残業は少ないと考えて良いでしょう。

 

休日はきちんと取れる?

どの病院も似たようなものだと思いますが、ほとんど勤務表通り取れます。

 

大規模病院は常に患者がいるため、土日は交代で出勤となります。その分だけ平日に休みを取ることになります。平日にしかできないこともありますが、遊びたくても友人はほとんど仕事をしています。結局は家でゴロゴロするだけの休みも多くなります。

 

私が勤めていた病院は基本週休二日制でした。数人の技師が勤務していたため、休診日以外はローテーションを組んでお互いに休みが取れるようにしていました。病院の規模が大きくなるほど診療放射線技師の数も多くなり、交代で休日を取ることができます。一方で技師数が少ない病院は徐々に休日取得が難しくなる傾向にあります。

 

放射線は危なくないの?

誰しもが「放射線=危険」と印象を持っていることでしょう。目に見えず、痛くも痒くもなく臭いさえしない。感じることができないからこそ厳密に法律で定められ、照射する人・照射される人ともに厳重に管理されています。

 

診療放射線技師は放射線の安全管理のエキスパートです。必要量の被ばく以外はしない。させないように教育・訓練されています。ちゃんとした防護を行っていれば、患者さんも放射線技師も被ばくによる危険性は低いといえます。

 

とはいえ普通の人に比べれば被ばくするリスクはあります。

放射線技師の業務別に見た被ばくリスク


※上から順にリスクが高い仕事

  1. RI検査
  2. 放射線治療
  3. X線テレビ検査
  4. 一般撮影検査
  5. CT検査
  6. MRI検査・超音波検査

 

少ない方からX線テレビ検査までが中小規模の一般病院で行われている検査で、被ばく量も多くありません(放射線治療やRI検査になると被ばくするリスクが増します。

 

実はみなさん放射線を浴びています

「放射線技師危ないのでは…」と感じる方はいるでしょう。私たちはプロなので事故が起きないよう、細心の注意を払っています。ですが、人間がやる仕事。1%もリスクが無いとは言い切れません。しかし、忘れていはいけないことがあります。

 

「実はみなさんも放射線を浴びてます」

 

普段の生活の中で被ばくしているのをご存知ですか?食べ物、大気中、地中、放射線はあらゆるところに存在し、日常的に被ばくしているのです。全ての生物は、生きている限り放射線被ばくからは逃げられません。

 

地域によっても違いますが、普通に生活した約一週間分の総被ばく量が、胸部レントゲン撮影1回分と言われています。

 

埼玉にも飛んできた!

東日本大震災による福島第一原子力発電所の事故がありました。大量の放射性物質が放出という未曽有の事態となりましたが、私が勤める埼玉の病院にも影響がありました。

 

大震災からしばらくして、黒く小さなシミのようなレントゲンフィルムが出ました。影が数か所写り込んでいるのです。初めは「何が写り込んでいるのだろう…」と分かりませんでしたが、ふと気づきました。

 

放射線を放出している微粒子が空気中を漂いながら、福島から遠く埼玉のレントゲン室に入り込み、フィルムに影を落としていったのです。その間、誰にも知られることなく放射線を放出し続けたわけです。気付くことのできない放射線の恐ろしさを感じた出来事でした。

 

被ばくのチェックは?

 

放射線を扱う技師や医師は、男性は胸ポケットに、女性は腹部のポケット付近に、どれだけ放射線を浴びたかを測定するバッジをつけて業務を行っています。この測定結果をもとに、法律で定められた通りキチンと被ばく線量を管理しています。

 

女性技師のニーズが高まっています!

私が放射線の学校に通っていた時は、一学年80人の学生に対して女性はたったの4人だけでした。他学年もだいたい同じような割合で、大学病院でも女性技師は数えるほどしかいませんでした。現在の診療放射線技師の男女比は8:2といわれています。まだまだ、男性が多い職種ですが、5倍の割合に増えています。

 

世間の予防医学への意識が高まりを見せる中、女性の乳がん検査の一つであるマンモグラフィーが健康診断に導入されることが多くなっています。必然と撮影する女性技師のニーズが高くなっています。

 

女性患者さんの乳房に触れてポジショニングしなければならないマンモグラフィー、男性より女性の技師に検査して欲しいと思うのは当然ですよね。女性で技師を目指す方は、「検診マンモグラフィー撮影診療放射線技師」の認定資格を取得するのがオススメです。就職、転職で強いアドバンテージになります。

 

各種認定資格

 

国家資格があれば当然仕事は出来ますが、それ以外で「認定資格」が存在します。「各特殊分野において能力を認めますよ」という資格になります。手当が付くこともありますし、就職や転職でも有利です。資格取得を目指して頑張っている技師も多いのです。

 

認定資格(一例)

  • 磁気共鳴専門技術者
  • X線CT認定技師
  • 血管撮影・インターベンション専門診療放射線技師
  • 乳がん検診超音波検査実施技師
  • 核医学専門技師
  • 救急撮影認定技師

 

未来の放射線技師へ

 

私が経験した「放射線技師」について記事にしました。一つ言えるのは…放射線技師は素晴らしい仕事ということです。

 

勉強を積み、経験を重ねると、画像を見る目が肥えてきます。白黒の写真に潜むちょっとした異変や病気が見えるようになってくるのです。放射線のエキスパートだからこそわかる視点や感覚で、医師にも見えなかった変化を発見することがあります。このことで病気が早い段階で見つかった、一つの命が救えた、そんな体験をします。

 

誰かの命を救う。こんな経験を一度でもすると「もっと知りたい!」という欲求が抑えきれなくなり、さらに深く勉強したくなります。診療放射線技師が患者さんと接する時間はとても短く、笑顔で退院していく患者さんから、感謝されるということはあまり多くはありません。

 

それでも、見えないところで皆さんの健康や生命を守っているという自負と誇りを持っています。技術や知識を突き詰めたいという職人魂、それが私たちのモチベーションへとつながっていくのです。

 

この記事を読んで、一人でも多くの方が「診断放射線技師」の道に進むことを願っています。私もまだまだ現役!腕を磨き続けます。どこかでお会いできる日を楽しみにしています。