昨今「働き方改革」という言葉をよく耳にします。
いろいろな意味合いがあると思いますが、これまでの企業が行ってきた働き方を見直そう。改革していこうという流れかと思います。
- 長時間残業の改善
- ムダな作業を減らす
- ○時までに完全退社
- 休日出勤はしない
このような改革をしている企業はたくさんあるかと思います。私が勤めていた会社でも取り組みが行われました。
結果は…
改善するどころか改悪。
逆に残業が増えて社内はぎくしゃく。
そんな状況に嫌気がさし…。会社への不信感が募っていった結果、退職という道を選びました。
激務と引き換え!マイホーム設計は最高のやりがい!
私の仕事は「マイホームの設計」です。専門学校を卒業し就職してから3年。ようやく一人前として仕事を任されるようになりました。
お客様にとっては一生に一度のお買い物。失敗は絶対に許されません。お客様の「ありがとう」「安心した」のために全力で仕事に取り組みます。施行時期は決まっているため納期があります。間に合わせるためには、長時間残業は避けられません。
仕事は激務でしたが…
- お家が完成した時
- お客様が喜んでくれた時
達成感を2度味わうことが出来ます。最高にやりがいのある仕事です。
働き方改革前の仕事スケジュール
改革前の仕事スケジュール
土曜〜日曜日 お客様との打ち合わせ
火曜〜水曜日 営業担当から図面の作成依頼
木曜〜金曜日 設計を行う(長時間残業)
木曜と金曜は納期に間に合わせるため、長時間残業が必要となります。だいたい日付が変わるくらいまで働いていました。終電=定時という感じですね。
そのようなペースで毎週案件を進めていきます。しかも、設計は図面を描くことだけが仕事ではありません。
- お客様との打ち合わせ参加
- 役所に向けた申請業務
- 分譲地のコンセプト提案
- 分譲住宅の設備選定
とにかくたくさんの仕事があります。打ち合わせに参加する際は、休日を返上して働くため大変な思いをしました。
中身のない働き方改革
そんな中、始まったのが「働き方改革」です。
- 残業を少なくする
- 休日出勤をなくす
「やったー!これで少しは仕事が楽になる」
やりがいのある仕事でしたが、プライベートの時間がほとんど無かったため、始めは素直に喜びました。休日もゆっくり休め、残業も少なくなる。集中して出来る分、仕事をもっともっと好きになれると思いました。
しかし、働き方改革が始まってから段々と仕事に追い込まれていくようになっていたのです。それは、世間体を気にしただけの中身のない働き方改革によるものでした。
働き方改革で追い込まれていく業務時間
働き方改革
- 20時以降の残業はしない
- 残業が必要な場合は上司に許可を得ること
まずこれが命じられました。自分では残業が必要と感じていても、上司が許可を出さなければ残業はできません。
突然始まったこの働き方改革。もちろん業務量を減らすという対処はされていませんでした。「とりあえず残業するな」という司令だけです。これまで残業で終わらせていた業務を、20時までに終わらせなければいけないのです。(これまでは24時まで残業)
当然、業務を終わらせることは出来ません。削ったのはお昼休憩です。ご飯を勢いよく口にかき入れ、同僚と会話する時間はなし。すぐに席へ戻って仕事に戻る。これは自分だけでなく部内全員が同じ状況です。
部署が違う同僚と食堂で話すことが多かった私ですが、この頃から話す時間が減っていきました。お客様が満足されるマイホームを作るには、部署同士の連携が必要不可欠です。連携を深めるための時間が減っていくのです。
そんな思いをして仕事が終われば良いのですが、とてもじゃないですが20時までには終わりません。あとは始業前を利用するしかなく、2時間も早出をして仕事を終わらせていました。
そんな勤務をしていましたが、働き方改革が世の中に大きな影響を及ぼしていたことは私自身分かっていました。ですので「働き方改革に乗り出した会社を信じよう、どうにかして仕事をこなそう」と必死になっていました。
ですが、いくら耐えても改善される兆しはありません。業務内に終わらない仕事は、家に持ち帰ってこなすことが増えていきました。
お昼休憩を短くしても、始業時間より早く出勤しても、家に持ち帰って仕事をしても、残業代が出るわけではありません。ですが、会社側からは表向きには残業時間が減っていて成功していると思い込んでいるのです。尻をぬぐうのは現場である私たちです。
極めつけは20時以降にある飲食店での打ち合わせ。食事をともにするのは表向きで、強制参加の打ち合わせ。断ることは出来ません。「こんな働き方改革ならしない方が良かった」と結論にたどり着きました。
働き方改革で会話時間が減る!社内がぎくしゃく
会社内ではお互いが話しかけづらい雰囲気が漂うようになっていきました。みんな朝早く出勤したり、お昼休憩を短くしたり、それぞれに時間に追われていることを知っていたからです。
20時が近づくと、他部署に行くのにも、コピー機に行くときも早歩き。そんな状態では聞きたいことがあっても到底話しかけられません。会社内が殺伐とした雰囲気に変わっていきました。
仕事中のちょっとした世間話も大事なコミュニケーションです。その日常だった光景が会社から無くなっていくのです。これでは良い仕事には繋がりません。
持ち帰り仕事増加!家族との会話時間も減る
もともと残業が多い仕事でしたが、家に帰ればプライベートタイム。実家暮らしの私は両親、兄弟と話す時間を必ず持っていました。
ですが、家に仕事を持ち帰るようになると、プライベートの時間が区別出来なくなります。どうしても仕事が気になってしまうのです。お風呂に入ったらやらなきゃ、リビングでゆっくりする暇はないとか。常に仕事のことが頭を過ぎり、自分の部屋に引きこもる時間が増えていきます。
当然家族との会話は減りました。
会社への不信感
ちょっとずつストレスは溜まっていき、そしてそれは会社への不信感へと繋がっていきます。
「従業員の辛さを理解してくれない本部」
「働き方改革に成功した!と上辺だけの話をする社長」
世間体だけを気にした中身のない働き方改革、としか感じなくなります。
お客様に最高のマイホームを提供したい、その思いで働いてきました。ですが、そこにすら集中することが出来ません。「仕事をこなす」としか考えないようになっては終わりです。
「最初は好きだった仕事なのに、なんでこんなに辛い思いをしながら仕事をしているのだろう」
ふと考えて勝手に涙が溢れだすこともありました。この時、自分の体と心は悲鳴を上げていたのかもしれません。
最後に
この中身の無い働き方改革がきっかけで、退職することになりました。私だけでなく何人も同じように辞めていきました。残業しても良いものを作ろう!と気概にあふれた会社、仕事が好きでした。
お客様のことを考えられなくなった、あの殺伐とした空気感だけは二度と味わいたくありません。働き方改革が進むのは良いことだと思っています。ですが、中身のない改革では意味がありません。