私は子供の頃から空港地上職員に憧れていました。様々な空港会社の中から、外資系航空会社に内定が決まった瞬間の喜びは今でも忘れられません。
かっこいい飛行機の側で働く憧れ、職員のキラキラ輝く姿、長年の夢が叶った瞬間でした。その時は、まさか2年で辞めること。過酷な勤務状況があることを想像していませんでした。
航空地上職員のスケジュール
勤務スケジュールはこんな感じです。
5:00~24:00 勤務 (ほぼ丸1日勤務)
空港寝泊まり
翌5:00〜昼12:00 勤務
約1日半を空港で過ごします。夜中24時でいったん仕事は終わりますが、すぐに仕事が始まります。自宅に帰ることが出来ません。
「勤務の拘束時間が長い…」
初勤務を終えた後の感想です。
しかし、最初の頃は前向きに捉えていました。友達とのお泊まり会のようにワクワク、その場所が憧れの空港だったのも大きかったでしょう。
拘束が長い…だんだんと苦痛に
空港での寝泊まりに苦痛を感じてきたのは、一通りの業務に慣れてきた頃でした。
空港の近くに住むと、タクシーで一時帰宅ができます。しかし、私が住む場所は勤務先から遠く、引っ越しも難しい状況でした。勤務のたびに、空港での寝泊まりを余儀なくされます。
「仕事が終わったらすぐに帰りたい」
「自宅でゆっくり寝たい」
こう思うのが自然なのですが…
職場はプライベート交流が盛んでした。職員は若い人が多いこともあり、寝不足でハイになって遊びにいくのです。仕事明けにみんなでご飯、ドライブ、海にいく。貴重な休みの日にはバーベキュー、キャンプ、テーマパークなど。
職場が仲良しなのは素晴らしいのですが、私にとってはただの苦痛でした。自分がおとなしい性格だったことも関係あります。陽気な同僚とだんだんとズレが生じてきます。
「ごめん、行かない」と3ヶ月後には断るようになっていました。次第にお誘いは減り、最後は誰からも声がかからなくなりました。
睡眠確保、ストレス軽減と良い点はありましたが、反対にマイナスな面も発生します。
仕事のお願いがしにくくなりました。空港職員はとにかく激務です。その日の体調によっては助けてもらう、助けてあげる。そんな関係性が重要となります。
「今日少し体調が悪いから1時間変わってくれる?」
仲の良い同僚同士はこんなやり取りをしています。
私はそれが出来ませんでした。相談する同僚もおらず、自分自身で勝手に孤立していったような気がします。
とにかく眠い…慢性的な睡眠不足
お昼に仕事が終わると、その翌日は休みとなります。ゆっくり休める…かと思いきやそんなことはありません。
次の早朝にはまた勤務が始まるのです。どこかに出かけてもそのことで頭がいっぱい、慢性的な睡眠不足に頭を悩ませます。
また、一般企業勤めの友人とズレが出てきます。一緒に飲みに行っても、あくびが止まらない。ついつい、うとうと寝落ちしそうになります。
「眠いの?つまらない?」
「仕事で疲れてるならもう帰ろうか」
友人に嫌な思いをさせてしまいました。
体調を気にかけて、早め解散を気にかけてくれたことが何度もあります。仕事のことは忘れて今の時間を楽しみたい、そう思っても体がまともに動きません。
めちゃくちゃ眠いわけでもないのに、気がつくと目を閉じてしまいます。そんな状況がずっと続きました。
普通の社会人のように…
- 夕方には帰宅したい
- 友人や彼氏とご飯に行きたい
- 朝カーテンを開けて朝日を感じたい
- 自宅で朝ごはんしながらゆっくりとコーヒーを飲みたい
「私はふつうのことが出来ない…」
業務中に何度も悲しくなりました。
世の中にはたくさんの仕事があります。私と同じ状況の方はたくさんいるでしょう。それでも、当日の私は自分だけ不幸を味わっている感覚に襲われていました。
父親がガンに、辞めようと思った最初のきっかけ
ある日、最愛の父が入院することになりました。病名はガン。
手術が必要となり、家族がみな入院中の病院へ向かっています。私は急な休みが認められず、業務をしなくてはいけませんでした。
その日は1日中落ち着かない気持ち。
「なんで自分は病院に行けないのだろう…」
「こんな日も空港に寝泊まりしなくていけないなんて…」
家族になにかあっても繰り返される日常業務、これは父のケースだけでなく今後も続きます。
「一生続けられる仕事ではない」
いつか辞める、辞めなくてはいけない、そんな気持ち。
結果として、無事に父の手術は成功しました。退院後、家族で快気祝いをしました。しかし、私は過酷な勤務後です。嬉しい気持ちとは裏腹に、寝不足で頭がふらふら。お酒も飲んでないのに酔っ払っている感覚です。
大事なときにも関わらず、気づくと寝落ちしていました。ほとんど私だけ参加することができず。
- 自分自身に問題があるのか?
- 何か病気を患っているのか?
真剣に悩んだことがあります。しかし、他同僚も同じ悩みを持っていました。みんなが疲れてボロボロ。
離職率が高い職種だった
勤めて始めて分かったのですが、空港地上職員は離職率が高いということです。
1日半の間、仕事はたくさんあります。外から見て華やかな仕事なんて一握りです。それでも、この仕事に憧れ毎年新人が多く入社してきます。
「今年生き残れるのは何人いるか」
1年も経つ頃には半分になっているのが現実です。そして、とうとう私にもその順番がまわってきました。
空港地上職員辞めた!
憧れを抱いて入社してからわずか2年、私は空港から去っていました。
当時は睡眠不足で本当につらく、正しい物事の判断ができていませんでした。なんとなく続けていましたが、一度倒れて入院したのを機に退職の運びに。
あの日から約5年が経ちました。今は空港と全然関係ない事務職に就いています。朝自宅で起きる。夕方には帰る。寝るのも当然自宅。ふつうの日々を楽しんでいます。
この記事を読んでいる方、もしかしたら空港という華やかな世界に憧れて現在も頑張っていることでしょう。
ただ、無理だけはしないでください。睡眠不足と激務は思考停止の原因です。一度冷静になって、自分がどうしたいか考えてみてください。